バシロサウルス(Basilosaurus)は、約4000万年前〜3400万年前(始新世後期)の海に君臨した、原始的なクジラ類です。「トカゲの王」を意味する学名は、発見された巨大な背骨の化石が、海生爬虫類のものだと誤認されたことに由来します。後に哺乳類だと判明しましたが、学名のルールにより変更されず、そのまま残りました。
ウナギのような巨体
全長は最大で18メートル(一部は20メートル以上とも)に達しましたが、現在のクジラとは全く異なる、蛇やウナギのように細長い体をしていました。この体型で浅瀬をくねらせて泳いでいたと考えられています。小さな後ろ足が残っていましたが、これは遊泳には役に立たず、交尾の際に相手を抑えるなどの用途に使われた痕跡器官でした。
海中の頂点捕食者
顎の力は強力で、鋭い歯が並んでいました。胃の内容物からは小型の古クジラ類(ドルドン)の幼体の頭骨が見つかっており、噛み砕いた跡がありました。彼らは魚やサメだけでなく、他の鯨類も襲って食べる獰猛なハンターでした。当時の海では無敵の存在だったでしょう。
完全水生への道
バシロサウルスは、完全に水生生活を送っていましたが、まだ噴気孔(鼻の穴)は頭のてっぺんまでは移動していませんでした。クジラの進化の中期段階を示す、異形の支配者です。
まとめ
名前に「サウルス(トカゲ)」と付きながらも哺乳類であるバシロサウルス。その長く奇妙な体は、クジラが今の流線型にたどり着くまでの試行錯誤の歴史を物語っています。