デイノケイルス(Deinocheirus)は、白亜紀後期のモンゴル・ゴビ砂漠に生息していた、極めて奇妙な姿をした獣脚類です。1965年に「長さ2.4メートルもの巨大な腕」だけが見つかり、「恐ろしい手」と名付けられました。以来50年近く正体不明の「謎の肉食恐竜」として恐れられてきましたが、2014年にようやく全身骨格が明らかになり、その予想の斜め上を行くユニークすぎる姿に、世界中の研究者とファンが腰を抜かしました。
想像を超えたキメラ恐竜
判明したその姿は、誰もが予想しなかったものでした。基本はダチョウ恐竜(オルニトミムス類)なのに全長11メートルという巨大サイズ、背中にはスピノサウルスのような「帆(隆起)」があり、顔はカモノハシのように長く平たく、そしてお腹はビール樽のように太鼓腹に膨らんでいました。巨大で鋭い殺戮の爪を持つ凶悪な肉食恐竜というかつてのイメージは崩れ去り、そこにいたのは、進化のパーツをランダムに組み合わせたようなユーモラスな「のんびり屋」でした。
雑食性の美食家
胃の内容物からは、植物の破片と共に大量の魚の鱗や骨が見つかりました。また、消化を助けるための胃石も1000個以上発見されています。あの恐ろしい手(巨大な爪)は、獲物を切り裂く武器ではなく、水辺の植物を刈り取ったり、泥の底にいる魚を熊手のようにすくい上げたりするための便利な道具だったのです。彼らは湿地帯をゆっくり歩き回り、手当たり次第に美味しいものを食べていました。
タルボサウルスとの遭遇
のんびりしているとはいえ、当時のモンゴルにはタルボサウルス(T-Rexの親戚)という凶暴な捕食者がいました。実際にデイノケイルスの化石には、タルボサウルスに噛まれた痕跡が残っています。しかし、彼らの巨大な爪と巨体は、襲ってきた敵を追い払うには十分な強力な武器にもなったでしょう。見た目は温厚そうですが、怒らせてはいけない恐竜だったのです。
まとめ
デイノケイルスは、わずかな化石から復元することの難しさと、進化の自由奔放さを教えてくれる最高の教材です。50年の沈黙を破って現れたその姿は、恐竜時代の奥深さを象徴しています。