夜空に浮かぶ星座「くじら座」の正体、それがこのケートスです。しかし、現代の私たちが知る愛らしいクジラの姿とは似ても似つかない、荒れ狂う海そのものを具現化したような恐怖の象徴でした。神の怒りによって遣わされ、王女アンドロメダを食らおうとしたその瞬間、英雄ペルセウスによって石に変えられた伝説は、今も星空に語り継がれています。
ケートスとはどんな怪物か?
神が放った処刑人
ケートスは、単なる野生の怪物ではありません。海神ポセイドンが、エチオピア王妃カシオペアの「私の娘アンドロメダは海の精霊よりも美しい」という傲慢な発言に激怒し、その罰として国を滅ぼすために送り込んだ、いわば「神の処刑人」です。その役割は、海岸線を破壊し、家々を押し流し、そして生贄として捧げられた王女アンドロメダを貪り食うことでした。
異形の姿
一般的には「巨大なクジラ」として翻訳されることが多いケートスですが、古代ギリシャの壺絵や彫刻では、現代の鯨とは異なる姿で描かれています。犬のような頭部、ライオンのような鋭い爪、そして鱗に覆われた蛇のような長い胴体と魚の尾を持つ、まさに「海のドラゴン」と呼ぶにふさわしい異形の姿をしています。
英雄ペルセウスとの激闘
絶望の生贄
神託により、国を救う唯一の方法は王女アンドロメダを生贄に捧げることでした。波打ち際の岩に鎖で繋がれた彼女の前に、ケートスが轟音と共に海を割って現れます。その巨体は波を巻き上げ、口からは海水を激流のように吐き出しながら、絶望する王女へと迫りました。
メドゥーサの首
まさにその時、空を飛ぶ靴を履いた英雄ペルセウスが通りかかります。彼は事態を理解すると、持っていた袋から切り落としたばかりの「メドゥーサの首」を取り出し、ケートスの目の前に掲げました。その恐ろしい魔力を見たケートスは、荒れ狂う波ごと一瞬にして巨大な岩塊へと変わり、海へと沈んでいきました。こうしてエチオピアは救われたのです。
現代に残るケートス
くじら座の由来
倒されたケートスは、その強大さを称えられて天に上げられ、「くじら座」となりました。秋の夜空南の地平線近くに見ることができます。星座絵でも、やはり魚の尾を持つ怪獣のような姿で描かれることが多いのが特徴です。
創作での扱い
ファンタジー作品やゲームでは、クラーケンと並ぶ海の恐怖として頻繁に登場します。映画『タイタンの戦い』では、神々すら持て余す最強の怪物として描かれ、クライマックスの最大の敵としてペルセウスの前に立ちはだかりました。
まとめ
ケートスは、人間の傲慢さに対する神の警告であり、また英雄の武勇を引き立てる最高の好敵手として、神話の中で重要な役割を果たし続けています。