古代エジプトの砂漠には、スフィンクス以外にも恐ろしい守護獣が存在しました。「アシェス(Axex)」、あるいはアケク。それは後の世にヨーロッパで「グリフィン」と呼ばれることになる幻獣の、祖先とも言える強大な聖獣です。
王家の守護者
グリフィンの原型
アシェスの姿はグリフィンに似ています。ライオン(またはチーター)の胴体に、鷹の頭と翼を持っています。しかし背中には、さらに装飾的な翼や、太陽円盤を背負っている姿で描かれることが多く、より神聖で呪術的な存在です。エジプト美術特有の緻密な装飾性が、この怪物の神秘性を高めています。
石化の嵐
最も恐ろしい能力は、口から吐き出す「砂嵐」です。この熱風に含まれる魔力によって、触れた人間は瞬時に水分を奪われ、生きたまま石像(あるいはミイラ)に変えられてしまうと言われています。王家の墓に近づく盗掘者たちへの、最強のセキュリティシステムでした。物理的な爪の攻撃だけでなく、魔法的な防御機構も備えている点が脅威です。
神話上の系譜
セト神の眷属?
砂漠と嵐を司るセト神と関連付けられることもあります。混沌と破壊の力を持ちながら、ファラオを守るためにはその凶暴な力が必要とされたのです。
ヨーロッパへの伝播
ギリシャへ
この「翼のあるライオン」というイメージは、クレタ島(ミノア文明)を経てギリシャ神話へと伝わり、そこで「グリフィン」として定着したという説が有力です。アシェスは、西洋ファンタジーの王道モンスターのルーツなのです。
【考察】自然の脅威
砂嵐の具現化
砂漠における砂嵐(カムシン)は、一瞬で視界を奪い、脱水症状や窒息で人を殺します。この圧倒的な自然現象が、「砂色の獣」の姿として具現化されたのがアシェスだと考えられます。
まとめ
アシェスは、美しい黄金の装飾に隠された、エジプト砂漠の過酷さと無慈悲さを体現する神獣です。古代人にとって、黄金と死は密接に結びついた概念であり、それを守る存在としてこれほど相応しい怪物はいなかったでしょう。