「監視の目」という言葉がありますが、それを極限まで体現したのが巨人アルゴスです。全身に100個(あるいは無数)の目を持ち、交代で眠ることで24時間365日、対象を見張り続けることができる鉄壁のガードマンでした。
イオの監視者
ヘラの命令
最高神ゼウスは、人間の女性イオと浮気をしていましたが、妻ヘラに見つかりそうになり、とっさにイオを白い牝牛に変えました。疑り深いヘラは、その牛を自分にプレゼントするよう要求し、見張り役としてアルゴスをつけました。
鉄壁の監視
アルゴスは決して眠りません。いくつかの目が閉じている間も、他の目は開いているからです。昼も夜も牛(イオ)を見張り続け、ゼウスが近づけないようにしました。
ヘルメスによる暗殺
笛の音と物語
困ったゼウスは、伝令神ヘルメスにアルゴスの殺害を命じました。羊飼いに変装したヘルメスは、葦笛(パンパイプ)を吹いて美しい音楽を奏で、さらに退屈で長い物語を語り聞かせました。一説には、この時ヘルメスが語ったのは「パンとシュリンクスの恋物語」だったと言われています。
全ての目が閉じる時
その心地よい音楽と催眠的な語り口、そして何より退屈さに、アルゴスの目は一つ、また一つと閉じていきました。ついに100個全ての目が眠りに落ちたその瞬間、ヘルメスはすかさず剣を抜き(または大きな石を投げつけ)、アルゴスの首を切り落として彼を殺害しました。
孔雀の羽へ
ヘラの追悼
忠実な部下であり、自分の命令を守り通して死んだアルゴスを哀れんだヘラは、アルゴスの死体から100個の目を取り出しました。そして、それを自分の聖鳥である孔雀(クジャク)の尾羽に散りばめ、彼を永遠に記念することにしたのです。孔雀の羽にある美しい目玉模様は、かつての巨人アルゴスの監視の目であり、今もなお世界を見つめ続けているのです。
まとめ
監視カメラ社会の現代において、アルゴスの神話は予言的でもあります。しかし、どんなに完璧なシステムも、心地よい「睡眠(油断)」には勝てなかったのです。