静かな湖畔に潜む影、それが一度暴れ出せば国中が水に沈む——ウェールズ神話に語られる「アーヴァンク」は、愛嬌のあるビーバーのような姿で描かれることもあれば、恐ろしいワニやドラゴンのような姿で描かれることもある、正体不明の水魔です。
アーヴァンクとは何か?
姿を変える水魔
アーヴァンクの姿についての伝承は様々です。ある時は巨大なビーバー、ある時はワニ、またある時はドワーフのような姿とも言われます。共通しているのは「水中に棲み、怪力を持ち、人間を襲う」という点です。
洪水の元凶
最も恐れられているのは、その巨体が動くだけで湖の水が溢れ出し、大洪水を引き起こすことです。ウェールズの伝説では、かつてアーヴァンクが引き起こした洪水によって、ブリテン島の生物がすべて溺れ死んだという壮大なスケールの話も残っています。
アーサー王と円卓の騎士
英雄たちとの戦い
アーサー王伝説にもアーヴァンクは登場します。円卓の騎士の一人、ケイやベディヴィア、あるいはパーシヴァルが戦ったとされ、その強固な皮膚は剣や槍を弾き返したと言われています。
美女と牛による捕獲作戦
ある伝承では、アーヴァンクを退治するために「美しい乙女の歌声」を利用しました。歌に聞き惚れて眠ってしまったアーヴァンクを、頑丈な鎖で縛り上げ、屈強な牛たちに引かせて湖から引きずり出したのです。この時、牛たちはあまりの重さに目を飛び出させたという逸話があります。
現代作品への影響
ゲームでの描かれ方
現代のファンタジー作品では、巨大な水生モンスターとして登場することが多いです。『ウィッチャー3』や『ファイナルファンタジー』シリーズなどでは、プレイヤーを苦しめる手強い敵として立ちはだかります。
【考察】ビーバーがなぜ怪物に?
絶滅動物の記憶
かつてイギリスにもヨーロッパビーバーが生息していましたが、中世には狩猟により絶滅しました。水辺にダムを作る習性や、時折見せる攻撃性が誇張され、洪水を引き起こす怪物として神話化された可能性があります。
まとめ
アーヴァンクは、自然の猛威(洪水)と、かつて身近にいた動物(ビーバー)への畏怖が混ざり合って生まれた、ユニークな怪物と言えるでしょう。