赤い顔に高い鼻の大天狗が、手に持っているフサフサした団扇。あれはただ暑さをしのぐためのものではありません。「天狗の羽団扇(はうちわ)」と呼ばれるそれは、自然界の猛威を自在に操る、とんでもないマジックアイテムなのです。
何でもありの万能ツール
11の神通力
伝承によっては、この団扇には11種類もの効果があるとされます。
- 飛行: 空を自由自在に飛ぶ。
- 縮地: 遠く離れた場所に一瞬で移動する。
- 分身: 自分の姿を増やす。
- 火炎: 火を起こしたり、逆に火事を消し止めたりする。
- 降雨: 雨を降らせる。 ...など、もはや「風を起こす」という団扇の機能を超越しています。基本的には「風」を操ることで、これら全ての現象を引き起こしていると解釈されます。
素材は何か?
絵画では、大きな鳥の羽を束ねて作った「羽団扇」として描かれることが多いですが、天狗の隠れ蓑と同様に「ヤツデ」の葉っぱとして表現されることもあります。ヤツデ(八つ手)は「人を招く」縁起物であると同時に、その大きな葉が魔を払う力を持つと信じられていました。
牛若丸と天狗
鞍馬山の修行
かの英雄・源義経(牛若丸)に剣術を教えたとされる鞍馬天狗も、この団扇を持っています。牛若丸の超人的な跳躍力や、目にも止まらぬ早業は、天狗の団扇による風の操作術を応用したものだった……という説も面白いかもしれません。
【考察】自然への畏怖
山の天候の具現化
山という場所は、急に突風が吹いたり、天候が崩れたりと、人間には予測不能な場所です。昔の人は、そうした山の気まぐれな自然現象を、「天狗が団扇を振るっている」姿として擬人化したのでしょう。羽団扇は、制御不能な自然エネルギーそのもののシンボルなのです。
まとめ
夏祭りの屋台で見かけるお面と一緒に売られている団扇。もしそれを振って突風が起きたら……あなたの後ろには、赤い顔をした山の神様が立っているかもしれません。