「疫病神」というと、現在では不吉な人や物を指す言葉として使われますが、かつては実際に感染症(天然痘やコレラなど)を運んでくる神様として、真剣に恐れられていました。目に見えないウイルスを擬人化した存在、それが**疫病神(やくびょうがみ)**です。
祀って追い出す
饗応と退散
日本人は疫病神に対し、力づくで戦うのではなく、「ご馳走やお酒でもてなし、機嫌よく帰ってもらう」という対処法をとることがありました。村の境目でわら人形を作り、それを疫病神に見立てて川に流す「人形送り」などの行事は、その名残です。
赤色の力
疱瘡神と赤
特に天然痘をもたらす「疱瘡神(ほうそうがみ)」は赤色を嫌う(あるいは好むため、赤で満足させる)とされ、病人の周りを赤い品物で囲む風習がありました。赤べこや達磨などの郷土玩具に赤が多いのは、この魔除けの意味があります。
守り神への転身
強い力は守りにも
恐ろしい力を持つ疫病神は、強力な神仏(牛頭天王や角大師など)によって調伏されることで、逆に疫病を防ぐ強力な守護神へと変わることがあります。「毒をもって毒を制す」の発想です。
まとめ
疫病神は、人間がコントロールできない自然の脅威への恐怖と、それとどう共存するかという知恵が生んだ神様です。不吉なだけでなく、人間の弱さと向き合うための存在とも言えるでしょう。