伊勢神宮の外宮に祀られている、日本における「食」の最高神。天照大御神でさえ、彼女がいなければ食事を摂ることができません。トヨウケビメは、私たちの命を繋ぐ「食べ物」そのものの尊さを象徴する女神です。
トヨウケビメとはどのような神か?
日本神話に登場する食物と穀物の女神です。正式名称は豊受大御神(とようけのおおみかみ)。伊勢神宮の外宮(豊受大神宮)の主祭神として知られます。元々は丹波地方の女神でしたが、天照大御神が「ひとりで食事をするのが寂しいし、安らかに食事ができないので、トヨウケビメを呼び寄せてほしい」と願ったため、伊勢に招かれました。これは日本の神道において「神様も食事(神饌)を大切にする」という思想を表しています。
神話でのエピソード
羽衣伝説の元祖
『丹後国風土記』の逸話では、彼女は天女の一人として地上に降り、水浴びをしていました。しかし老夫婦に羽衣を隠されて天に帰れなくなり、彼らの養女となって万病に効く酒を造り、家を富ませました。しかし最後は家を追い出され、悲嘆に暮れながら各地を放浪して鎮座したとされます。これは有名な羽衣伝説の原型の一つと言われています。
食は生命
彼女の名前の「ウケ」は食物を意味します(ウカノミタマと同じ)。彼女は単なる農業神ではなく、衣食住すべての産業の守護神として広く崇拝されています。
信仰と文化への影響
外宮先祭
伊勢神宮の祭りは、まず外宮(トヨウケ)から行い、その後に内宮(アマテラス)を行う「外宮先祭」という習わしがあります。これは「食事を用意してから主君にお出しする」という順序、あるいは「食べることで精力をつけてから神事に臨む」という意味があると言われます。
お伊勢参り
江戸時代のお伊勢参りのブーム以来、彼女は庶民にとって最もありがたい「生活の神様」として親しまれ続けています。
【考察】その本質と象徴
食事への感謝
最高神であるアマテラスの「専属シェフ」として呼び寄せられたことからも分かるように、日本人は「食べる」という行為自体に神聖な意味を見出していました。「いただきます」の精神のルーツはここにあるのです。
まとめ
今日のご飯が美味しいこと。それは彼女が今も伊勢の地から、日本の食卓を見守っている証拠なのかもしれません。