村の入口や峠道でひっそりと佇む石像。それらの多くは「道祖神」と呼ばれるが、そのルーツの一つに、黄泉の国から逃げ帰った伊邪那岐命(イザナギ)が生み出した「久那土神(クナドノカミ)」がいることをご存知だろうか。
黄泉からの帰還が生んだ神
杖から生まれた守護者
『日本書紀』によれば、イザナギは黄泉の国から逃げ帰った際、「これ以上、死の穢れがこちら側に来てはならない」と言って杖を投げた。 この杖から化生したのが久那土神である。名前の「クナド」は「来な処(くなと)」すなわち「来てはならない場所」を意味するとされる。
最初の「塞の神」
久那土神は、この世とあの世の境界に立ち、黄泉の軍勢や疫病、災厄が現世に侵入するのを防ぐ壁となった。 これが「塞の神(サエノカミ)」信仰の始まりである。
道祖神としての姿
村を守る境界の神
時代が下ると、久那土神は各地の土着信仰と習合し、村の境界を守る「道祖神」として親しまれるようになった。 外部からの「見知らぬもの(疫病・悪人)」を遮断する役割に加え、男女一対の像として描かれることで縁結びや子孫繁栄の神としての側面も持つようになる。
【考察】境界線の守護者
心理的な防壁
古代の人々にとって、村の外は魔物が跋扈する異界であった。 久那土神は物理的な境界だけでなく、人々の心の安寧を守る「心理的な防壁」としての役割も果たしていたのではないだろうか。
まとめ
久那土神は、今も私たちの生活圏の境界線に立ち、目に見えない災厄から静かに私たちを守り続けている。