「おのころ島」を作り、淡路島を皮切りに日本列島すべてと、そこに住む多くの神々を生み出した、まさに日本という国の父親。それが**伊邪那岐命(イザナギ)**です。しかし彼の物語は、輝かしい創造の伝説だけではありません。物語の後半は、火傷で死んでしまった最愛の妻を追って地獄(黄泉の国)へ行き、そこで変わり果てた妻の姿を見て逃げ帰るという、まるでホラー映画のような展開を見せます。神様でありながら、愛に悩み、恐怖し、そして再び立ち上がる、非常に人間臭い始祖神の姿を紹介します。
国生みと神生みの偉業
天沼矛(あめのぬぼこ)
高天原の神々から「下界を固めて国を作れ」と命じられたイザナギとイザナミは、授かった「天沼矛」で混沌とした海を「こおろこおろ」とかき混ぜました。矛を引き上げた時に滴り落ちた塩が固まって、最初の島「おのころ島」ができました。二人はここに降り立ち、夫婦の契りを結んで、次々と島々(日本列島)と自然の神々を生み出していきました。
妻との悲劇的な別れ
しかし幸せは長く続きませんでした。火の神カグツチを生んだ際、イザナミが大火傷を負って死んでしまったのです。イザナギは泣き崩れ、怒りのあまりに我が子カグツチを斬り殺してしまいます。そして諦めきれず、タブーを犯してまで黄泉の国へと妻を迎えに行きますが、そこで待っていたのは恐ろしい結末でした。
最後の対決と三貴子の誕生
離婚と呪い、そして祝福
腐敗した妻の姿を見て逃げ出したイザナギに対し、イザナミは激怒して追いかけてきました。イザナギは黄泉比良坂(よもつひらさか)という境界を巨大な岩(千引の石)で塞ぎ、「お前とは離婚だ!」と宣言しました。「お前の国の人間を毎日1000人殺す」と呪うもと妻に対し、イザナギは「それなら私は毎日1500人の産屋を建てる(子供を生ませる)」と言い返しました。これが、人間に「寿命」が生まれ、それでも人口が増えていくことの起源とされています。
禊(みそぎ)からの誕生
黄泉の国の穢れを落とすため、日向の地で川に入って顔を洗った時、左目からアマテラス、右目からツクヨミ、鼻からスサノオという、最も尊い三柱の神(三貴子)が生まれました。彼は最後に最高傑作を生み出し、彼らに世界を託して隠居したのです。
現代作品でのイザナギ
ペルソナ4
主人公の初期ペルソナとして登場。長い学ランのような意匠と、矛を武器にしたスタイリッシュなデザインで、シリーズ屈指の人気を誇ります。物語の最後には「伊邪那岐大神」へと進化し、真実を掴むための切り札となります。
まとめ
イザナギは、創造の偉業と、愛する者との悲劇的な別れを経てもなお、生を生み出し続ける力強さを持った神です。彼の「毎日1500人生む」という言葉は、どんなに死が訪れても、生命は決して絶えることなく続いていくという、力強い希望のメッセージなのです。