京都の夏の風物詩、祇園祭。この壮大な祭りは、本来牛頭天王(ごずてんのう)という神の怒りを鎮め、疫病を退散させるための儀式でした。牛の頭を持ち、斧を振るう恐ろしい姿で描かれるこの神は、薬師如来の仮の姿とされ、また日本のスサノオノミコトとも同一視される、強烈なパワーを持った神格です。
蘇民将来と巨旦将来
貧者への報恩
昔、牛頭天王が旅の途中で宿を求めた際、裕福な弟・巨旦将来(こたんしょうらい)は断りましたが、貧しい兄・**蘇民将来(そみんしょうらい)**は粟の飯で精一杯もてなしました。喜んだ牛頭天王は、「疫病が流行っても、腰に茅の輪(ちのわ)をつけて『蘇民将来の子孫だ』と言えば助けてやろう」と約束しました。
容赦ない復讐
その後、疫病が大流行して巨旦将来の一族は滅びましたが、蘇民将来の一族だけは助かりました。この伝説から、「蘇民将来子孫也」という護符や、茅の輪くぐりの風習が生まれました。牛頭天王は、味方には手厚いが、敵には容赦ない神なのです。
スサノオとの習合
荒ぶる神の共通点
平安時代以降、その荒々しい性格から、日本神話でヤマタノオロチを倒したスサノオと同一視されるようになりました。明治の神仏分離で「牛頭天王」の名は公式には消え、八坂神社の祭神はスサノオとなりましたが、祇園祭の熱狂の中には、今も牛頭天王の荒ぶる魂が息づいています。
まとめ
毒を以て毒を制す。牛頭天王は、疫病という死の恐怖そのものを神として祀り上げることで、それを克服しようとした日本人の祈りの結晶なのです。