彼こそが人類で初めて「死」を経験し、冥界への道を発見した男。その功績により死者の国の王となったヤマ。日本では「閻魔大王」として知られる彼の正体は、慈悲深くも厳格な、正義の裁判官です。
ヤマとはどのような神か?
ヒンドゥー教における死者の国の王であり、南方を守護する神です。ヴェーダの時代には、最初に死んだ人間として、後続の死者たちが住む楽園の王となりました。しかし時代が下ると、死者の生前の行いを裁き、罪人を罰する恐ろしい地獄の支配者となりました。肌は緑色(または青黒色)で、水牛に乗り、死者の魂を縛る縄を持っています。これが後に仏教に取り入れられ、中国・日本に伝わって「閻魔天(閻魔大王)」となりました。
神話でのエピソード
妹ヤミーの誘惑
彼には双子の妹ヤミーがいました。ある時、ヤミーはヤマに「子孫を残すために交わろう」と誘惑しましたが、ヤマは「近親相姦は法(リタ)に反する」として拒否しました。彼は欲望よりも道徳と法を重んじる、高潔な人格者だったのです。この潔癖さが、後の「裁判官」としての性格に繋がっています。
4つ目の犬
彼には2匹の犬(サーラメーヤ)が仕えています。それぞれ4つの目を持ち、広く世界を監視して死にそうな人間を見つけ、冥界へと誘導する役割を持っています。
信仰と文化への影響
閻魔様
日本では「嘘をつくと舌を抜かれる」でおなじみの閻魔様です。地蔵菩薩と同一視されることもあり、恐ろしい顔の裏に、人々を救いたいという慈悲の心を秘めているとされます。
ヨーガのヤマ
ヨーガ(ヨガ)の八支則における「ヤマ(禁戒)」は、殺生や嘘を慎むべきという道徳律を指しますが、これは法王ヤマの厳格な性質と語源的に関連しています(制御する、という意味)。
【考察】その本質と象徴
最初の死者
「最初に死んだ人」が死の王になるという設定は、死とは神から与えられる罰ではなく、人間が自ら切り開いた(あるいは避けて通れない)運命の道であることを示唆しています。
まとめ
彼はただ恐怖を与えるだけの存在ではありません。彼が裁くのは、私たちが生前どう生きたか、その「生き様」そのものなのです。