「ホープダイヤモンド」や「コ・イ・ヌール」のように、美しすぎる宝石にはしばしば血塗られた逸話がつきまといます。インド神話の「シャマンタカ」もその一つ。毎日8荷分もの黄金を生み出すという夢のような機能を持つこの宝石は、神の化身であるクリシュナさえも冤罪事件に巻き込みました。
太陽神からの贈り物
無限の富
ヤダヴァ族の貴族サトヤージットは、太陽神スーリヤを熱心に信仰し、その報酬としてこの宝石を授かりました。シャマンタカを身につけた彼は太陽のように輝き、ドワールカの国に富と飢饉からの解放をもたらしました。
クリシュナの提案と固辞
英雄クリシュナは「そのような宝は王が持つべきだ」と提案しましたが、サトヤージットはこれを拒否。これが後に、「クリシュナが宝石を欲しがっている」という噂の火種となります。
行方不明と殺人の連鎖
盗難疑惑
ある日、サトヤージットの弟が宝石をつけて狩りに出かけ、ライオンに殺されて宝石を奪われます。さらにそのライオンを熊の王ジャンヴァヴァンが倒し、宝石を住処へ持ち帰りました。 弟が戻らないのを見た人々は「クリシュナが宝石欲しさに殺したのだ」と噂しました。身の潔白を証明するため、クリシュナは捜索の旅に出ます。
熊の王との対決
熊の巣穴を見つけたクリシュナは、ジャンヴァヴァンと28日間にも及ぶレスリング勝負を繰り広げ、ついに勝利して宝石を取り戻しました。これにより冤罪は晴れましたが、その後もこの石を巡って一族同士の殺し合いが続きました。
【考察】富の二面性
シャマンタカは「善人が持てば繁栄をもたらすが、悪人が持てば破滅する」という特性があります。人間が富という強大な力を御しきれず、自滅していく様を描いた道徳的な物語装置とも言えるでしょう。
まとめ
シャマンタカの輝きは、人間の心の闇を照らし出します。どれほど黄金を生み出そうとも、それがもたらす争いのコストを考えれば、持たない方が幸せだったのかもしれません。