アニメ『Fate』シリーズで「刺し穿つ死棘の槍」としてスタイリッシュに描かれ、一躍有名になったゲイ・ボルグ。必殺の武器として知られていますが、本来の神話におけるその姿は、騎士道的なかっこよさとはかけ離れた、もっと原始的でグロテスクな殺戮兵器でした。敵の体内で破裂するように変形し、内臓をズタズタにするという、想像を絶するエグい能力の全貌に迫ります。
影の国の魔女からの贈り物
海獣の骨で作られた槍
ゲイ・ボルグは、影の国(異界)の女王にして最強の戦士スカサハによって作られました。その素材は、二人の海獣(怪物)が争った末に残された「コインヘン」という怪物の頭蓋骨だと言われています。スカサハはこの骨を加工して凶悪な槍を作り、弟子の英雄クー・フーリンだけにその扱い方を伝授しました。
足で投げる必殺奥義
現代の創作では手で持って突き刺していますが、神話の記述によれば、この槍は**「足の指で挟んで蹴り投げる」**のが正しい作法とされています。水面を移動するときも、敵を狙うときも、トリッキーで不可思議な軌道を描いて敵の防御をすり抜け、必ず標的を仕留めたのです。
摘出不可能な呪いの棘
30の棘が体内を駆け巡る
ゲイ・ボルグの真の恐ろしさは、命中した後にあります。一度敵の体に突き刺さると、穂先から30本もの小さな棘(あるいは返し)が一斉に飛び出し、血管や筋肉を伝って植物の根のように体中に広がります。こうなると引き抜くことは絶対に不可能で、死体から槍を回収するには、死体の肉を切り刻んで骨ごと粉砕して取り出すしかありませんでした。
親友と息子を殺した槍
あまりに強力すぎる力は、持ち主に悲劇をもたらしました。クー・フーリンはこの槍を使って、かつて同じ師の下で学んだ無二の親友フェルディアや、自分の息子であるコンラを、(本意ではない決闘の末に)殺害しています。無敵の勝利をもたらす代償に、愛する者を奪っていく「呪いの槍」としての側面は、多くのケルト神話の悲劇性を象徴しています。
まとめ
スタイリッシュな必殺技の代名詞となったゲイ・ボルグですが、その本質は「残酷な死をもたらす異界の骨」です。逃れられない宿命と共に敵を貫くその切っ先には、英雄クー・フーリンの強さと、深すぎる悲哀が宿っています。