ラグナロクに備えて、来る日も来る日も殺し合いの訓練に明け暮れる北欧の戦士たち(エインヘリャル)。彼らの楽しみは、戦いの後の豪勢な宴です。何百、何千人という大食漢の戦士たちの胃袋を支えているのが、決して底をつくことのない魔法の大鍋、エルドフリームニルです。
ヴァルハラの台所事情
最高の食材、最高の料理人
『古エッダ』によれば、このシステムは3つの要素で成り立っています。 1.セーリムニル: 毎日殺されて肉になっても、夕方には元通りに蘇る不思議な猪。 2. エルドフリームニル: すべての肉を最高の状態で煮込む、煤で真っ黒になった大鍋。 3. アンドフリームニル: 神々のシェフ。彼がこの鍋を使えば、肉は瞬く間に極上のシチューになります。
味も栄養も満点
この鍋で作られた料理は、どれだけ大勢の戦士が食べてもなくなることはありません。また、激しい戦闘で傷ついた体力を瞬時に回復させる滋養強壮効果もあるとされます。戦士たちは、ヘイズルーンという山羊から絞った蜜酒とともに、この肉を貪り食うのです。
【考察】「ダーグザの鍋」との共通点
ケルト神話との類似
「決して空にならない鍋」というモチーフは、ケルト神話の主神ダーグザが持つ「魔法の大釜」にも見られます。こちらは死者を蘇らせる力もありました。古代の人々にとって、飢えのない永遠の満腹こそが、死後の世界における最高の幸福であり、楽園の条件だったのでしょう。現代風に言えば、究極のSDGs(持続可能な)食料システムと言えるかもしれません。
まとめ
エルドフリームニルは、戦う男たちのパラダイス、ヴァルハラを象徴するアイテムです。美味しい肉と酒が無限にあるなら、毎日の死闘も悪くない?……かもしれません。