黄金でも宝石でもなく、鋭い棘(トゲ)で作られた王冠。それは「ユダヤ人の王」を自称したイエスに対する、ローマ兵たちの残酷なブラックジョークでした。しかし、血に染まったその冠は、2000年の時を経て、この世で最も尊い王冠(Crown)として崇められています。
ゴルゴタへの道
嘲りの戴冠式
ピラト総督の官邸で、兵士たちはイエスに紫の衣を着せ、茨で編んだ冠を頭に押し付けました。「ユダヤ人の王、万歳」と唾を吐きかけ、葦の棒で頭を叩きました。棘は皮膚に食い込み、激しい苦痛と出血を伴いましたが、イエスは無言で耐え続けました。
聖遺物としての旅路
コンスタンティノープルからパリへ
この冠とされる遺物は、長い時を経てフランス王ルイ9世(聖ルイ)の手に渡りました。彼はこれを安置するためにパリのサント・シャペル教会を建設しました。その後、ノートルダム大聖堂に移され、2019年の火災の際も奇跡的に救出されたことは記憶に新しいでしょう。
苦しみの昇華
茨の冠は、「苦しみ(Thorns)」が「栄光(Crown)」に変わるという逆説的な希望を象徴しています。自ら進んで苦難を受け入れることが、魂の救済に繋がるという思想の根幹をなすアイテムです。
まとめ
茨の冠は、権力が他者を傷つけるためにあるのではなく、他者の痛みを引き受けるためにあることを教えています。その棘は、今も私達の良心に刺さり続けているのです。