すべての民が老いることも病むこともなく、死ぬことさえなかった「黄金時代」。それを築き上げたのがペルシャ神話の偉大な王ジャムシードです。しかし、彼の物語は輝かしい成功だけでなく、あまりにも残酷な転落の教訓でもありました。
ジャムシードとは?
輝ける王
ジャムシードは古代イラン神話における理想的な王です。彼は悪魔(デーウ)たちを服従させ、建築や織物、医学、航海術などあらゆる文明の技術を人々に教え、世界を繁栄させました。
ジャムシードの杯
彼が持っていたとされる「ジャムシードの杯」は、水鏡のように世界のあらゆる場所を映し出すことができたと言われ、後の「聖杯」伝説の一つの起源とも考えられています。
700年の栄華と転落
黄金時代
彼の治世は700年続き、その間、世界からは死や病気、争いが消え去りました。人口が増えすぎると、彼は神の力で大地を広げ、全ての人々を養いました。
傲慢という罪
しかし、あまりの繁栄にジャムシードは次第に増長し、「私が世界を創造したのだ」と自らを神と称するようになりました。この傲慢さにより、神の恩寵(フワルナ)は彼から去り、彼は王座を追われることになります。
後世への影響
ノウルーズ(イラン暦の新年)
現在でもイランで祝われる新年「ノウルーズ」は、ジャムシードが王座に就いた日を記念して始まったとされています。
文学での引用
オマル・ハイヤームの『ルバイヤート』など、多くのペルシャ文学において、ジャムシードとその杯は「過ぎ去りし栄華」や「現世の儚さ」の象徴として詠われています。
【考察】古代のソロモン王?
共通するモチーフ
悪魔を使役し、知恵と富を極めた王という点で、ジャムシードはイスラエル王ソロモンと多くの共通点を持ちます。古代の王権神話の典型例と言えるでしょう。
まとめ
頂点まで登り詰めながら、自身の心を見失って破滅したジャムシード。その杯に残ったのは、美酒ではなく苦い教訓だったのかもしれません。