「王」と呼ばれることを拒み、ただ「聖墓の守護者」として生きることを選んだ男。ゴドフロワ・ド・ブイヨンは、血なまぐさい十字軍の歴史の中で、理想的な騎士道の体現者として輝き続けています。
理想の騎士ゴドフロワ
第一次十字軍の指導者
11世紀末、教皇の呼びかけにより始まった第一次十字軍。多くの貴族が領土や富を目当てに参加する中、ゴドフロワは純粋な信仰心を持って参戦したと言われています。彼は私財を投げ打って軍を組織し、苦難の道のりを経てエルサレムを目指しました。
王冠を拒否した伝説
聖墓の守護者
1099年、十字軍がついにエルサレムを攻略した際、諸侯はゴドフロワを初代エルサレム王に推挙しました。しかし彼は、「救世主が茨の冠を被ったこの地で、金の王冠を被ることはできない」としてこれを固辞。「聖墓の守護者(Advocatus Sancti Sepulchri)」という称号のみを受け入れました。
武勇伝
彼は敬虔なだけでなく、戦場では鬼神の如き強さを発揮しました。アンティオキアの戦いでは、敵の騎兵を兜ごと真っ二つに切り裂いたという伝説も残されています。
後世の評価
九偉人(ナイン・ワーシーズ)
中世ヨーロッパにおいて、彼はアーサー王やカール大帝と並ぶ「九偉人」の一人に数えられました。騎士道の模範として、数々の武勲詩や物語の題材となりました。
【考察】実像と虚像
政治的バランス感覚
伝説では完全無欠の聖人とされますが、史実の彼は優れた政治家でもありました。野心家のボエモンやレイモンといった他の諸侯とのバランスを取りながら、十字軍という寄せ集めの大軍をまとめ上げた手腕こそが、彼の真の才能だったのかもしれません。
まとめ
権力よりも信仰と名誉を重んじたゴドフロワ。その潔白な生き様は、現代のリーダーシップ論にも通じる高潔さを持っています。