多くの神々が、成長する怪物フェンリルを恐れて近づこうともしなかった中、唯一彼に餌を与え続け、最後は世界を救うために自らの腕を代償に怪物を封印した、北欧神話で最も勇気ある神。単なる戦闘の神ではなく、契約や誓いを守る「正義」と「法」の象徴でもあります。高潔なる隻腕の戦士、テュールの伝説を紹介します。
テュールとはどんな神か?
最も勇敢なアース神
オーディンの息子(あるいはヒュミルの子)とされ、トールと並ぶ武闘派ですが、トールが「力」を象徴するなら、テュールは「規律と戦略、そして勇気」を重んじる軍神です。かつては最高神の地位にあったとも言われており、英語の「Tuesday(火曜日)」は「Tyr's day」が語源となっています。
隻腕の理由
神々がフェンリルを魔法の紐グレイプニルで縛ろうとした際、フェンリルは疑って「安全だというなら、俺の口の中に誰かの腕を入れておけ」と要求しました。誰もが尻込みする中、テュールだけが静かに右手を差し出しました。拘束が解けないと悟ったフェンリルは、その場でテュールの手首を食いちぎりました。彼は痛みに耐え、仲間のためにその身を捧げたのです。
ラグナロクでの最期
番犬ガルムとの対決
世界の終末ラグナロクでは、冥界の入り口を守る巨大な番犬ガルム(ギリシャ神話のケルベロスに似た怪物)と一対一で戦います。片腕でありながら互角以上に渡り合い、激闘の末にガルムを倒しますが、自身も深い傷を負い、相討ちとなって果てました。最期まで勇敢な戦士として散りました。
現代作品でのテュール
God of War ラグナロク
平和を愛する賢者として登場。かつての戦争神としての姿ではなく、各地の文化を学んだ外交官のような立ち振る舞いで、争いを止めようと尽力する姿が描かれました。クレイトスの良き理解者となります。
まとめ
テュールは、「平和のために剣を取り、秩序のために自己犠牲を払う」という、真の騎士道精神を体現した、尊敬すべき英雄神です。