インドの母なる川、ガンジス。その正体は天界から降り注いだ女神ガンガーです。彼女の水に触れれば、あらゆる罪は浄化され、魂は救済される。インド人にとって、彼女は単なる川ではなく、流れる信仰そのものなのです。
ガンガーとはどのような神か?
ヒンドゥー教におけるガンジス川の女神です。ワニ(マカラ)に乗った美しい女性の姿で描かれます。彼女の水は神聖であり、触れるだけですべての罪(カルマ)を洗い流すと信じられています。そのため、死者の遺灰をガンジス川に流すことは、ヒンドゥー教徒にとって人生の最高のゴールとされています。彼女は優美ですが、その奔流は時に激しく、すべてを破壊する力も秘めています。
神話でのエピソード
シヴァの髪
元々ガンガーは天界を流れる川でした。バギーラタ王の熱心な祈りにより地上へ降りることになりましたが、彼女の重さで大地が砕ける恐れがありました。そこでシヴァ神が自らの髪(まげ)で彼女の激流を受け止め、勢いを弱めてから地上へ流しました。このため、シヴァ神と共に描かれることが多く、彼の妻の一人とされることもあります。
ビーシュマの母
叙事詩『マハーバーラタ』では、シャンタヌ王と結婚して英雄ビーシュマを生みました。しかし彼女は子供が生まれるたびに川に流してしまう(天界に戻すため)という常人には理解不能な行動を取り、それを止められたため王のもとを去りました。
信仰と文化への影響
聖地ワーラーナシー
ガンジス川のほとりにある聖地ワーラーナシー(ベナレス)には、毎日多くの巡礼者が訪れ、沐浴を行っています。汚れているように見える水も、信徒にとっては最高の聖水なのです。
日本の七福神?
実は日本の弁才天(サラスヴァティー)も川の女神ですが、ガンガーのイメージも一部混入していると言われます。しかしガンガー単独での信仰は日本には定着しませんでした。
【考察】その本質と象徴
流転する生と死
川は生命を育むと同時に、死を受け入れ、海へと運び去ります。生と死が渾然一体となって流れるインドの死生観を、ガンガーは象徴的に体現しています。
まとめ
汚れを洗い流し、海へと還る。彼女の流れに身を任せる時、人は永遠のサイクルの一部となるのです。