北欧の戦士たち(バイキング)は荒くれ者でしたが、同時に言葉遊びや詩を愛する文化を持っていました。そんな彼らが崇拝したのが、立派な髭を蓄えた詩の神ブラギです。オーディンの息子であり、英雄たちの武勇伝を後世に語り継ぐ、神々の宮廷詩人です。
舌に刻まれたルーン
言葉の魔術師
ブラギの舌にはルーン文字が刻まれていると言われています。これにより、彼はあらゆる言葉を巧みに操り、美しい詩を即興で紡ぎ出すことができます。また、彼は非常に雄弁であり、彼を味方につければどんな交渉事も上手くいくと信じられていました。妻は青春の林檎を管理する女神イドゥンであり、二人はアースガルズの中でも特に愛される夫婦です。
名前の由来
「Bragi」という名前は、「詩人」や「指導者」を意味する古ノルド語に関連しています。現代英語の「brag(自慢する)」の語源になったとも言われますが、これは彼が祝宴の席で「誓いの杯」を掲げ、これから成し遂げる武勲を宣言する儀式を司っていたことに由来します。
詩の蜜酒
才能の源
飲めば誰でも詩人になれるという「詩の蜜酒」。オーディンが苦労して巨人から奪ってきたこの貴重な酒は、ブラギによって管理されているとも、あるいはオーディン自身がブラギ(という人格)を通じて人々に分け与えているとも言われます。彼が語る詩は、戦死してヴァルハラに招かれた英雄たちを歓迎し、慰めるためのものでした。
ロキとの口論
平和的な神であるブラギですが、祝宴の席で乱入してきたロキとは激しく口論になりました。ロキに「ベンチ飾りの臆病者」と侮辱された際、ブラギは「ここが宴席でなければ首をはねている」と返し、詩人らしい鋭い言葉の応酬を繰り広げました。
スカルド詩人の守護神
実際の詩人がモデル?
9世紀頃に実在した有名なスカルド詩人、ブラギ・ボッダソンが神格化されたのがこの神ではないかという説もあります。
まとめ
剣の腕だけが強さではありません。言葉によって人の心を動かし、歴史を紡ぐブラギの力は、ある意味でどんな武器よりも長く残る、最強の魔法なのかもしれません。