北米の広大なスペリオル湖には、古くからオジブワ族(アニシナアベ族)によって語り継がれるヌシがいます。その名はミシピシュー、「水中の大山猫」。愛嬌のある名前とは裏腹に、彼は湖の猛威そのものを象徴する恐ろしい存在です。
水中の大山猫
奇妙なキメラ
ミシピシューは、単なる猫ではありません。その姿は「巨大な水中の山猫」ですが、全身は龍のような鱗で覆われており、背中や尾には剣のように鋭い銅のスパイクが生えています。さらに頭には鹿のような大きな枝角を持ち、水陸両方の特徴を併せ持つ強力な霊獣です。
銅の守護者
彼らが住むスペリオル湖周辺は、古くから銅の産地として知られていました。ネイティブアメリカンの人々は、これらの銅をミシピシューの体の一部、あるいは彼が守る宝物だと考えていました。そのため、みだりに銅を持ち去ろうとする者は、ミシピシューの怒りを買い、嵐によって湖に沈められると言われています。
湖の支配者
水を操る力
ミシピシューは単なる怪物ではなく、湖そのものの化身とも言える強大な力を持っています。尻尾を振るだけで大波を起こし、氷を砕き、急激な嵐を呼び寄せてカヌーを転覆させます。人々は湖を渡る際、タバコなどを捧げて安全を祈願しました。
天敵サンダーバード
彼には唯一の天敵がいます。それは空の支配者である雷鳥「サンダーバード」です。湖のミシピシューと空のサンダーバードの戦いは、水と空、地上の混沌と天空の秩序の対立を表しているとされます。
岩絵に残る姿
カナダのオンタリオ州にあるスペリオル湖州立公園のアガワ岩には、かつての先住民が描いたミシピシューの壁画が今も鮮明に残っています。赤い顔料で描かれたその姿は、この地の自然に対する畏敬の念を現代に伝えています。
まとめ
美しくも厳しいスペリオル湖。その深い青色の下には、今も銅の守護者ミシピシューが潜み、人間たちの行いを見つめているのかもしれません。