動物園にいる首の長いキリンではありません。神話における麒麟は、慈愛に満ちた徳の高い生き物であり、殺生を嫌い、草さえも踏まないと言われるほど優しい聖獣です。中国の神話体系において、麒麟はすべての毛を持つ動物の長とされ、鳳凰や龍と並ぶ最高ランクの神獣として扱われています。その体は鱗に覆われ、尾は牛、蹄は馬に似ており、頭には一本の角が生えています。その姿を見た者には幸福が訪れるとされ、古来より皇帝たちの憧れの的でした。
麒麟の驚くべき特徴
獣の長としての格
五行説によれば、麒麟は「土」の徳を司り、中央を守護するとされています。毛のある動物(毛蟲)の王とされ、龍(鱗蟲)、鳳凰(羽蟲)、亀(甲蟲)と並ぶ四霊の一つに数えられます。龍が皇帝のシンボルであるのに対し、麒麟は仁徳のある王(聖人君子)のシンボルとされ、政治が正しく行われている世の中にのみ姿を現すと伝えられています。
殺生を嫌う仁獣
麒麟は生きている虫を踏まず、草を折ることさえしません。その角は肉に覆われており、誰も傷つけないことから「武を備えて使わざる」平和の象徴とされています。しかし、一度怒らせたり、邪悪なものが前に立ちはだかったりすると、口から聖なる火を吐いて浄化するという強い一面も持っています。優しさと強さを兼ね備えた、まさに理想の王者のような存在です。
孔子と麒麟の伝説
獲麟(かくりん)
儒教の祖である孔子が生まれる前、麒麟が現れて「玉書」を吐き出したという伝説があります。また、孔子の死の直前にも傷ついた麒麟が現れたと言われ、これを「獲麟」と呼びます。孔子はこの麒麟を見て「吾が道窮まれり(私の役目も終わった)」と嘆き、筆を折ったと伝えられています。このように、麒麟は歴史の転換点に現れる象徴的な存在なのです。
ゲーム・創作における麒麟
雷を操る古龍として
伝統的な神話では「土」の属性を持つとされる麒麟ですが、現代のゲーム作品(特に『モンスターハンター』シリーズなど)では、電撃を操る幻獣として描かれることが一般的です。これは、麒麟が素早く駆け巡る姿が稲妻を連想させることや、天候を操る神聖なイメージが雷と結びついたためと考えられます。
高難易度の強敵
慈愛に満ちた聖獣という設定の一方で、ゲームでは「怒らせると手がつけられない最強クラスのモンスター」として登場することが多くあります。『ファイナルファンタジー』シリーズや『女神転生』シリーズでも、最高ランクの召喚獣や悪魔としてプレイヤーの前に立ちはだかります。「徳の高い王の前に現れる」という伝承は、「実力のあるプレイヤーだけが挑める隠しボス」という形で現代に受け継がれているのかもしれません。
まとめ
麒麟は、平和で治まった世の中にしか姿を現さないと言われています。もし現代に麒麟が現れたなら、それは世界が平和になった証左なのかもしれません。私たち一人一人が徳を積むことで、いつかまた麒麟が舞い降りる日が来るのでしょう。