その名を呼ぶだけで災いが降りかかるとされる「名状しがたきもの」。ハスターは、風の属性を持つ旧支配者であり、水の属性を持つクトゥルフとは激しい敵対関係にあります。黄色のボロ布を纏った「黄衣の王」としての化身が特に有名です。
名状しがたきその姿
不定形の風の神
ハスターの本体は、ハリ湖の底に棲んでいるとされていますが、その真の姿を明確に描写することは困難であり、しばしば巨大なタコやトカゲに似た怪物として描かれます。しかし、より有名なのはその化身である**「黄衣の王」**です。黄色のフードとローブを身にまとい、その下には見るもおぞましい触手や虚無が広がっていると言われています。
名前を呼んではいけない
「いあ! いあ! はすたあ!」という呪文は有名ですが、彼の名を不用意に呼ぶことは死を意味します。ハスターは自身の名を呼ぶ者を感知し、恐るべき怪物「バイアクヘー」を送り込んで殺害、あるいは連れ去ってしまうからです。
クトゥルフとの因縁
属性の対立
オーガスト・ダーレスによって体系化された設定では、ハスターは**「風」の属性を司り、「水」**の属性を持つクトゥルフとは相容れない天敵同士とされています。この対立構造は、クトゥルフ神話TRPGなどのゲーム作品において、シナリオのフックとして頻繁に利用されます。
呪われた演劇
『黄衣の王』という戯曲を読む者は、次第に狂気に蝕まれ、ハスターの影響下に落ちると言われています。この「読むだけで狂う本」というモチーフは、後のホラー作品に多大な影響を与えました。
ポップカルチャーでのハスター
萌えキャラ化の先駆け
『這いよれ!ニャル子さん』のハス太くんにより、ハスターもまた萌えキャラクターとして広く知られるようになりました。風を操る能力や、ニャル子(ニャルラトホテプ)との関係性は原典を踏襲しつつも、内気な少年という全く新しい解釈がなされました。
Identity V (第五人格)
人気ゲーム『Identity V』では、ハンター「ハスター」として登場します。黄色のローブを纏い、触手を行使してサバイバーを追い詰める姿は、原典の「黄衣の王」のイメージを忠実に再現しており、その恐ろしさとカリスマ性を見せつけています。
【考察】なぜ「黄色」なのか?
狂気の色
19世紀末のデカダン派文学において、「黄色」は退廃や狂気を象徴する色として好まれました。ハスターの原型となったチェンバースの短編集『黄衣の王』は、この系譜に連なる作品です。鮮やかでありながらどこか不穏な黄色は、ハスターの持つ芸術的な狂気を完璧に表現していると言えるでしょう。
まとめ
ハスターは、物理的な破壊力だけでなく、芸術や狂気を通じて精神を侵食する、知的で洗練された恐怖の象徴です。古書店で黄色い表紙の台本を見つけても、決して開いてはいけません。