上半身が人間、下半身が巨大な蜘蛛というグロテスクながらも妖しい魅力を持つ怪物アラクネ。ゲームでは毒や糸でプレイヤーを苦しめる強敵ですが、元ネタの彼女は、ただ「機織り(はたおり)が上手すぎる」という理由で神罰を受けた、人間の女性でした。
アラクネとは?
天才機織り少女
アラクネは、リュディア地方に住む機織りの名人でした。その技術は素晴らしく、森のニンフたちが見物に訪れるほどでした。しかし、彼女は自分の才能を鼻にかけ、「私の技術は工芸の女神アテナさえも凌ぐ」と豪語してしまいます。これが悲劇の始まりでした。
女神との直接対決
侮辱されたアテナは老婆に変装して警告しますが、アラクネは聞き入れません。ついにアテナは正体を現し、機織り勝負を挑みます。アテナは「神々の威光と、人間に罰を与える場面」を織り上げましたが、対するアラクネは「神々の不貞や堕落した行い(ゼウスの浮気現場など)」を完璧な技術で織り上げ、神の権威を痛烈に皮肉りました。
蜘蛛への変身
勝負の結末
技術的には互角、あるいはアラクネの方が優れていたとも言われます。しかし、その不敬な題材に激怒したアテナは、アラクネの織物を引き裂き、彼女を打ち据えました。恥辱を感じたアラクネは首を吊って自殺しようとしますが、アテナはそれを許さず、「未来永劫、宙にぶら下がって糸を紡ぎ続けよ」と呪いをかけ、彼女を蜘蛛の姿に変えてしまったのです。
アラクノフォビア
この神話は、蜘蛛が巣を張る習性の起源譚(由来)となっています。また、蜘蛛恐怖症を指す「アラクノフォビア」という言葉も、彼女の名前に由来しています。
現代作品でのアラクネ
複合モンスターとしての定着
神話では「蜘蛛そのもの」に変えられましたが、ダンテの「神曲」煉獄篇において「半人半蜘蛛」の姿で描写された影響で、ファンタジー作品では「上半身が女性、下半身が蜘蛛」のケンタウロス型(通称ドライダー型)として描かれるのが一般的です。
トラップの名手
RPGでは、粘着性のある糸でパーティーの動きを封じ、猛毒の牙で攻撃する状態異常のエキスパートとして登場します。「女神転生」シリーズのアルケニーのように、狡猾な性格付けがされることも多いです。
【考察】アラクネの恐ろしさ
職人の狂気
彼女の本質は怪物としての身体能力ではなく、神にさえ喧嘩を売る「職人としてのプライド」と「執念」にあります。その糸は単なる捕縛道具ではなく、獲物を芸術作品のように絡め取る、残酷な美意識の産物なのかもしれません。
まとめ
傲慢の罪で堕ちた天才職人アラクネ。彼女は今も暗闇の中で、神への恨みを織り込んだ複雑な巣を張り続けているのです。