三種の神器の中で、最も神格が高く、別格の扱いを受けているのが**八咫鏡(やたのかがみ)**です。太陽神アマテラスオオミカミが孫のニニギノミコトを地上へ送る際、「この鏡を私だと思って、同じ床で同じように大切に祀りなさい」と言い渡したことから、現在でも伊勢神宮の内宮にはアマテラスそのもの(御神体)として鎮座しています。
巨大な鏡の誕生と失敗
職人の最高傑作
天岩戸の前で引きこもったアマテラスを誘い出すため、鍛冶の神であるイシコリドメ(石凝姥命)が作りました。実は一発で成功したわけではなく、最初に作った「日像鏡(ひがたのかがみ)」と「日矛鏡(ひぼこのかがみ)」は少し出来が悪かったため、和歌山県の日前神宮と國懸神宮に祀られています。3度目の正直で完成したのが、この八咫鏡です。「八咫(やた)」とは「とても大きい」という意味で、円周か直径かは諸説ありますが、とにかく巨大で美しく輝く鏡だったようです。
鏡が持つ霊力と役割
自分を見せるための罠
岩戸の隙間からアマテラスが顔を覗かせた時、外にいた神々は「あなた様より尊い神が現れました」と言ってこの鏡を突きつけました。鏡に映った自分の輝く姿を(自分と気づかずに)見て、「本当だ、すごい神がいる」と思って身を乗り出したところを、力持ちの神タヂカラオが引っ張り出したのです。つまり、世界に光を取り戻すための「囮」として使われたのが最初の役割でした。
嘘を暴く力
後の伝説では、すべてをありのままに映し出すことから、正直な心(清明心)の象徴とされました。古代の裁判において、罪を犯した者がこの鏡の前に立つと、その罪状が映し出されたとも言われています。「鏡(カガミ)」から「我(ガ)」を取ると「神(カミ)」になる、という言葉遊び(言霊思想)も、この鏡の神聖さを表しています。
まとめ
八咫鏡は、日本神話において「世界に物理的な光を取り戻した」アイテムであり、同時に、人の心の曇りを払う「精神的な光」の象徴でもあります。