**稚日女尊(ワカヒルメ)**は、その名の通り「若く瑞々しい日の女神(ヒルメ=天照大御神の別名)」を意味する神です。
神戸の生田神社の主祭神として有名で、地元では「ご縁結びのいくたさん」として親しまれています。神話では天照大御神の妹、あるいは娘、あるいは幼名であるとも言われますが、最も有名なのはスサノオの狼藉によって命を落とした「機織り女」としての悲劇の伝説です。
スサノオと機織りの悲劇
聖なる機織り
高天原の斎服殿(いみはたどの)で、ワカヒルメが神々の衣を織っていた時のことです。 乱暴を働いていたスサノオが、建物の屋根に穴を開け、そこから皮を剥いだ馬(天の斑駒)を投げ込みました。
驚いたワカヒルメは、持っていた梭(ひ:機織りの道具)で女陰(ほと)を突いて亡くなってしまったと『日本書紀』には記されています(古事記では「天の服織女」とされ名前は出ない)。 この事件にショックを受けた天照大御神は天岩戸に引きこもってしまい、世界は闇に包まれました。
復活と同一視
太陽の分身
死んだはずのワカヒルメですが、生田神社の由緒では、神功皇后の三韓征伐の帰路に「私は活田長峡国(いくたのながおのくに)に居たい」と神託を下して鎮座したとされます。 これは、ワカヒルメが単なる犠牲者ではなく、天照大御神の「和魂(にぎみたま)」、つまり「新しい生命力にあふれた朝日のような側面」を人格化した存在であるため、何度でも蘇る(あるいは死なない)太陽の性質を表していると考えられています。
まとめ
稚日女尊は、若々しくエネルギッシュな太陽の女神です。機織りが縦糸と横糸を結ぶように、人と人との縁を結ぶ神として、今日も神戸の街を見守っています。