神話において、最も偉大な神でさえ知らないことを、名もなき小さな存在が知っていることがあります。**多邇具久(タニグク)**は、ヒキガエル(谷蟇)の神様です。大国主神(オオクニヌシ)が出雲で国作りを始めた頃、海の彼方からガガイモの舟に乗ってやってきた親指ほどの小さな神様がいました。大国主が誰に聞いてもその名を答えられなかった時、「久延毘古(クエビコ・案山子の神)なら知っているはずだ」と進言し、謎を解く糸口を作ったのが、このタニグクでした。
地を這う者の知恵
なぜ知っていたのか?
「タニグク」とは「谷に潜るもの」という意味で、ヒキガエルを指します。カエルは地面にお腹をつけて這い回るため、国土の津々浦々、草の根のレベルまで知り尽くしていると考えられました。また、冬眠から目覚める習性から、死と再生(黄泉の国)の秘密を知る霊的な動物とも見なされていました。
スクナビコナの正体
タニグクの助言によりクエビコに尋ねた結果、小さな神は神産巣日神(カミムスヒ)の子である**少名毘古那神(スクナビコナ)**だと判明しました。これにより、大国主はスクナビコナという強力なパートナーを得て、国作りを完成させることができたのです。タニグクは、歴史を動かす重要な情報のキーマンでした。
足腰と帰る(カエル)
現代では、カエルの語呂合わせで「無事に帰る」「若返る」というご利益はもちろん、地面をしっかり踏みしめる姿から、足腰の守護神としても信仰されることがあります。決して派手ではありませんが、地に足のついた知恵を授けてくれる神様です。
まとめ
視点を変えれば、世界は違って見える。タニグクの低い視点は、高みにいる神々が見落としていた真実を捉えていたのです。