「ミシャグジ様」という名前を聞いたことがあるだろうか? 古代諏訪の地を支配し、あの建御名方神(タケミナカタ)でさえ完全には滅ぼせなかった最古の祟り神。その正体は、神というよりは自然そのものの荒ぶる力に近い。
ミシャグジとは何か?
諏訪の最古の支配者
ミシャグジは、記紀神話(古事記・日本書紀)の神々がやってくる遥か昔から、諏訪地方(現在の長野県)で信仰されていた土着の神である。 石や木、笹などに降りるとされ、特に白蛇の姿でイメージされることが多い。
祟り神としての恐怖
その性質は極めて荒々しく、「祟り神」の代名詞とも言える。 かつては神官(守矢氏)のみがその祭祀を許され、一歩間違えれば死に至るほどの強力な呪力を持つと恐れられた。
国譲り神話の裏側
タケミナカタとの戦い
出雲を追われた建御名方神(タケミナカタ)が諏訪に逃げ延びた際、現地の支配者であった**洩矢神(モレヤ)**と争ったとされるが、この洩矢神が使役していたのがミシャグジであるとも言われる。
征服されざる神
タケミナカタは勝利し諏訪の主神となったが、ミシャグジ信仰は消滅しなかった。 むしろ、タケミナカタを祀る諏訪大社の祭祀において、ミシャグジを降ろす儀式(御頭祭など)が中心的な役割を果たし続けるという、奇妙な二重構造が生まれたのである。
現代作品でのミシャグジ
真・女神転生シリーズ
「邪神」や「国津神」として登場。独特のヌメッとした白い不気味なフォルムで描かれ、古参ファンには強いインパクトを与えている。
東方Project
『東方風神録』に登場するキャラクター「洩矢諏訪子」のモチーフや設定に、ミシャグジ(ミシャグジ様)の要素が色濃く反映されている。
【考察】縄文の残滓
縄文信仰の生き残り
ミシャグジは、稲作以前の狩猟採集文化、すなわち**縄文時代の精霊信仰(アニミズム)**が、形を変えて現代まで生き残った稀有な例と考えられる。 その「祟る」性質は、自然への根源的な畏怖そのものなのだ。
まとめ
ミシャグジは、勝者によって書き換えられた歴史の闇から、今なおこちらを覗き込んでいる古代の眼差しそのものである。