猪(イノシシ)の背に乗り、疾風のように駆け抜ける女神・摩利支天(まりしてん)。元々はインド神話の女神であり、太陽の光、特に**「陽炎(かげろう)」**が神格化されたものです。陽炎は、目に見えるけれど手で掴むことも、剣で切ることも、焼くこともできません。この「傷つかない」「捉えられない」という性質から、日本の武士たちは彼女を最強の護身・必勝の神として熱狂的に信仰しました。
武士と忍者の守護神
名だたる武将の信仰
「楠木正成」は兜の中に小さな摩利支天像を忍ばせていたと伝わり、「毛利元就」や「前田利家」も熱心な信者でした。戦場において敵に見つからず、奇襲を成功させ、無傷で帰還するために、摩利支天の真言(オン マリシエイ ソワカ)は最強の呪文とされたのです。
忍術の祖?
その「隠形(姿を消す)」の能力から、摩利支天は忍者の守護神とも見なされました。日本三大八幡の一つ、鳩森八幡神社(東京・千駄ヶ谷)の将棋堂の隣や、上野アメ横の徳大寺など、今でも各地で祀られています。
イノシシに乗る女神
亥年の守り神
摩利支天はしばしば、7頭のイノシシに乗ったり、イノシシ車を引かせたりする姿で描かれます。このため、十二支の亥(いのしし)年生まれの守り本尊とされています。脇侍や乗り物がイノシシであるため、狛犬ならぬ「狛猪」が置かれている寺院もあります。
まとめ
実体を持たず、しかし確かに存在する光の化身、摩利支天。誰にも縛られない自由と、災厄をすり抜ける強運を、彼女は授けてくれるでしょう。