**熊野久須毘命(クマノクスビ)**は、天照大御神とスサノオの誓約で生まれた五男神の末っ子(五男)です。
「熊野」という名を冠していることから、和歌山県の聖地熊野三山との深い関わりが推測されますが、神話において彼が何をしたかという具体的な記述は一切ありません。しかし、その名は「熊野の神秘的な霊力」そのものを表しており、古代から聖地として崇められた熊野の自然信仰を擬人化した存在とも考えられます。
「クスビ」の意味とは
奇しき霊力
「クスビ」は「奇(くす)し」+「霊(ひ)」、つまり**「不思議な霊力」**を意味するとされています。また「楠(クスノキ=古来より神聖視される樹木)」や「薬(クスリ)」に通じるとする説もあります。 いずれにせよ、彼が武力や統治ではなく、呪術的・霊的なパワーを象徴する神であったことは確かです。
熊野信仰との関わり
熊野那智大社の祭神
現在、世界遺産にも登録されている熊野那智大社の祭神の一柱(第4殿)として祀られています。熊野は「死と再生の地」として信仰を集めてきましたが、クマノクスビはその霊的な中核を担う神々の一員として、長く崇敬されてきました。
氏族の祖
出雲国造の同族
『新撰姓氏録』などによれば、彼の子孫もまた出雲国造と同族であるとされ、近畿地方の祭祀に関わる氏族へと繋がっていきます。目立たぬながらも、祭祀の現場においては重要な役割を果たしていた神です。
まとめ
熊野久須毘命は、具体的な物語を持たない「沈黙の神」です。しかし、その名は熊野という土地の持つ底知れぬ霊威を今に伝えています。