ツギハギだらけの布人形に、五寸釘や針を突き立てる。ホラー映画の定番アイテムですが、実はこの人形、元々は「人を癒やす」ための道具だったことをご存知でしょうか?
誤解された「呪いの象徴」
本来は治療用?
ブードゥー教(ヴォドゥン)において、人形は精霊(ロア)との交信用に使われる神聖な祭具でした。また、人形に針を刺す行為は、一種の**「鍼治療」**を模倣したものであり、患部に針を刺すことで遠隔地の人間の痛みを癒やすための儀式だったという説もあります。これが西洋の映画製作者たちによって、「針を刺して痛めつける呪いの道具」として歪めて伝えられてしまったのです。
日本の藁人形
丑の刻参り
日本にも類似の呪術として**「丑の刻参り」**が存在します。御神木に藁人形を五寸釘で打ち付け、相手を呪い殺すというものです。こちらは明確に「呪殺」を目的としており、人形の中には相手の髪の毛や爪を入れることで、強いリンク(繋がり)を持たせます。原理としては「感染呪術(類似の法則)」に基づいています。
ゲームでの役割
身代わりになってくれる
近年のゲーム(例:『テラリア』や『Don't Starve』)では、攻撃用ではなく防御用アイテムとして登場することも多いです。プレイヤーが受けるはずのダメージを人形が肩代わりしてくれる、あるいは死んだ瞬間に身代わりとなって壊れることで蘇生できるといった「守り神」のような扱いをされています。
【考察】形代(かたしろ)の思想
自分を投影する器
人形を誰かに見立てて操作するというのは、人類共通の原始的な発想です。それは攻撃にも使えれば、守りにも使えます。ブードゥー人形の不気味さは、自分という存在が他人の手の中で無防備な物体に置き換えられてしまう、その生理的な嫌悪感にあるのかもしれません。
まとめ
呪うか、癒やすか、守るか。その小さな人形に込められるのは、針よりも鋭い人間の「念」そのものなのです。