水晶玉や鏡で未来を見る伝説は世界中にありますが、ペルシャ神話においては「盃(さかずき)」こそが世界の真実を映す鏡でした。「ジャムシドの盃」は、覗き込むだけで全宇宙の事象を把握できる、古代の監視衛星システムとも言える至宝です。
王の中の王ジャムシド
輝ける王
ジャムシド王は、ペルシャ神話の黄金時代を築いた偉大な王です。彼は神から授かった(あるいは自ら作った)この不思議な盃を持っており、その中には「不死の霊薬」が満たされていたとも伝えられています。
全知の視界
盃の中を覗くと、世界の7つの地域(ケシュヴァル)のすべての様子が映し出されました。王はこの力を使って世界の隅々まで統治し、病や死さえも遠ざけましたが、やがてその力に溺れ、自分を神と称したことで神の怒りを買い、破滅しました。
スーフィズムにおける象徴
心の鏡
後のペルシャ文学や神秘主義(スーフィズム)において、この盃は「神の真理を映す人間の心」の象徴として扱われるようになりました。ハーフィズなどの詩人は、神の愛や宇宙の神秘を「ジャムシドの盃」に例えて詠っています。
現代への影響
『アルスラーン戦記』などのファンタジー作品においても、ペルシャ風の世界観を彩る重要なアイテムとして、または王権の象徴として登場することがあります。西洋の「聖杯伝説」とも比較される、東洋の神秘の器です。
まとめ
ジャムシドの盃は、知ることの万能感とその危うさを同時に描いています。世界全てを見通すことができても、自分自身の慢心を見抜くことはできなかった王の物語は、現代の情報社会にも通じる教訓を含んでいます。