魔法や神の力が信じられていた時代、ただ一人の天才が「科学」の力で最強のローマ軍を退けました。数学者アルキメデスが考案したとされる「死の鏡」。それは太陽の光を集めて船を燃やすという、現代のソーラーエネルギー兵器の先駆けでした。果たしてこれは実話なのでしょうか?
熱光線、発射!
シラクサ防衛戦の切り札
紀元前212年、ローマ軍によるシラクサ包囲戦。アルキメデスは投石機や巨大な鉤爪など、数々の奇想天外な兵器でローマ軍を撃退しました。その中でも最も有名で謎めいているのが「鏡」です。海岸に巨大な六角形の鏡(または兵士たちが磨き上げた青銅の盾)を配置し、太陽光を一点に集中させて、沖合に停泊するローマ木造船に焦点を合わせ、火災を起こしたと言われています。
現代の再現実験
この伝説はずっと「物理的に不可能」とされてきましたが、現代になっていくつかの再現実験が行われました。MIT(マサチューセッツ工科大学)の実験では、127枚の鏡を使って木製の船模型を発火させることに成功しています。ただし、動いている船を狙うのは至難の業であり、実戦でどれほど有効だったかは議論が続いています。
【考察】心理的効果の大きさ
「光」への恐怖
仮に船を完全に燃やす火力がなかったとしても、強烈な閃光による目くらましや、船体から煙が上がる様子は、ローマ兵に「神の雷を受けた」と思わせるのに十分だったでしょう。アルキメデスの知性が生み出したのは、物理的な熱量以上の「未知への恐怖」だったのかもしれません。
現代に生きる技術
太陽熱発電所
現在、砂漠地帯にある「タワー式太陽熱発電所」は、まさにアルキメデスの鏡そのものです。何千枚もの鏡(ヘリオスタット)で塔の上部に光を集め、その熱でタービンを回す。古代の兵器技術は、数千年の時を経て、クリーンエネルギー技術として平和利用されているのです。
まとめ
アルキメデスの鏡は、知恵こそが最大の武器であることを教えてくれます。たとえ剣を持たなくとも、物理法則を味方につければ、巨大な帝国とも渡り合えるのです。