「朝(あした)に辞す 黄河の楼」……漢詩『木蘭辞』に歌われる伝説の少女、花木蘭(ファ・ムーラン)。ディズニー映画で世界的に有名になりましたが、彼女の物語の核心はロマンスではなく、老いた父を想う**「孝」の心と、男社会の中で実力で道を切り開いた「勇」**にあります。10年以上に及ぶ戦場生活を男として生き抜いた、中華最強のヒロインの素顔とは。
父の身代わりになった娘
徴兵令
北方の異民族(柔然など)の侵攻により、皇帝は国中から兵を徴収しました。木蘭の家には年老いた父しかおらず、弟はまだ幼い。父が出征すれば生きては帰れないでしょう。木蘭は決心しました。「私が父様の代わりに男として戦場へ行く」。彼女は市で馬と鞍を買い、長い髪を結い上げ、両親に別れを告げました。
戦場の英雄、そして帰郷
12年の従軍
戦いは過酷で長く、12年(一説では数十年)にも及びました。木蘭は数々の武勲を立て、将軍にまで昇進しますが、誰も彼女が女性だとは気づきませんでした。
化粧に戻る日
戦争が終わり、皇帝から褒美として高い官位を与えられそうになりますが、彼女はそれを辞退し「故郷へ帰るための駿馬だけが欲しい」と願いました。家に帰り、鎧を脱いで女の服に着替え、化粧をして再登場した時、共に戦った戦使たちは腰を抜かすほど驚いたといいます。「12年も一緒にいたのに、お前が女だったなんて!」
現代のアイコンとして
ジェンダーロールの打破
儒教社会である古代中国において、「女性が家を出て戦う」という物語は非常に特異であり、かつ民衆に愛されました。現代では「自分の居場所を自分で勝ち取る女性」のシンボルとして、フェミニズム的な文脈でも高く評価されています。
実在した?
北魏(鮮卑族)の時代が舞台とされることが多いですが、確実な歴史的証拠はありません。しかし、遊牧民族の女性は実際に馬に乗って戦うこともあったため、モデルとなる人物はいた可能性があります。
【考察】ウサギの詩
オスとメスの見分け方
『木蘭辞』の最後はこう結ばれています。「雄ウサギは足をバタつかせ、雌ウサギは目を細める。だが、二匹が野原を走っている時、誰がそのオスとメスを見分けられようか?」。能力があれば性別など関係ない、という痛快なメッセージが、千年以上前の詩に込められているのです。
まとめ
家族への愛から剣を取り、実力で英雄となったムーラン。彼女の伝説は、いつの時代も「自分らしく生きる勇気」を与えてくれます。