美しい歌声で男たちを館に招き入れ、魔法の杖を一振りして豚に変えてしまう恐ろしい魔女。それがキルケーです。しかし彼女は、単なる悪役ではありません。英雄オデュッセウスと恋に落ち、彼を助ける良き助言者でもありました。愛と魔法に生きた、神話最強の魔女の一人の素顔とは。
アイアイエー島の魔女
メタモルフォゼ(変身)の達人
太陽神ヘリオスの娘である彼女は、薬草学と魔法の天才でした。彼女の住む島の周りには、人懐っこい狼やライオンがいましたが、それらは全て魔法で姿を変えられた人間でした。彼女は気に入らない相手や、無遠慮な侵入者を動物に変えることで罰していたのです。
オデュッセウスとの対決
豚にされた部下たち
漂着したオデュッセウスの部下たちに、彼女は毒入りの麦粥(キュケオーン)を振る舞い、豚に変えてしまいました。しかしオデュッセウスだけは、ヘルメス神から授かった薬草「モーリュ」を持っていたため魔法が効きませんでした。
恋と別れ
剣を突きつけられたキルケーは降参し、部下を人間に戻しました。その後、二人は恋仲となり、1年間島で過ごしました。別れの際、キルケーは冥界への行き方を教えるなど、彼の旅路を全面的にサポートしました。
現代作品でのキルケー
Fate/Grand Order
「キュケオーン(麦粥)」を執拗に勧めてくる愉快なキャスターとして登場。背中に鷹の翼を持ち、可愛らしくもどこか寂しげな少女のような性格です。豚化魔法も健在。オデュッセウスへの未練と、新しいマスターへの愛着の間で揺れる乙女心が描かれます。
【考察】魔女の原型
誘惑と破滅
「男を誘惑して動物(本能の塊)に変える」というキルケーのイメージは、後の西洋文学における「ファム・ファタール(運命の女)」の原型となりました。彼女は、理性を失わせる愛の恐怖を象徴しているのかもしれません。
まとめ
魔法で姿を変えることはできても、去りゆく男の心を繋ぎ止めることはできなかったキルケー。その孤独こそが、彼女を人間臭い魅力的な魔女にしています。