「醜男」と嘲笑されながらも、その頭脳と度胸でフランスの救世主となった男。エドワード黒太子を苦しめ、奪われた領土を次々と奪還したベルトラン・デュ・ゲクランは、騎士道華やかなりし時代に「勝つための戦術」を徹底した異色の英雄です。
ブルターニュの暴れん坊
不遇の幼少期
ブルターニュの下級貴族に生まれた彼は、色黒で鼻が潰れ、極めて不器量だったと言われています。親からも疎まれましたが、喧嘩と力比べでは誰にも負けない腕白少年でした。
傭兵からの成り上がり
百年戦争が始まると、彼は正規の騎士としてではなく、盗賊のような非正規部隊を率いて頭角を現します。森に隠れて敵を襲うその戦い方は、当時の騎士道精神には反するものでしたが、確実に成果を上げました。
フランス大元帥への道
焦土作戦の展開
賢王シャルル5世に才能を見出された彼は、フランス軍の最高司令官である大元帥に任命されます。彼は強敵イギリス軍との正面衝突を徹底して避け、補給線を断ち、孤立した城を各個撃破する「ファビウス戦術(遅滞戦術)」を展開。これによりイギリス軍は疲弊し、フランスは着実に領土を回復していきました。
国民的英雄として
サン・ドニ大聖堂
彼の死後、その功績を称えてフランス王家の墓所であるサン・ドニ大聖堂に埋葬されることが許されました。王族以外でその栄誉に浴したのは彼を含めてごくわずかです。
【考察】近代戦術の先駆者
名誉より勝利
一騎打ちの華やかさよりも、泥臭い勝利を選んだゲクラン。彼の戦い方は、個人の武勇に依存していた中世の戦争を、組織的な総力戦へと変える転換点だったと言えるでしょう。
まとめ
見た目の悪さを補って余りある知性と行動力。ゲクランは、コンプレックスを力に変えて時代を動かした、全ての「持たざる者」への希望の星です。