雷神ペルーンの宿敵であり、大地と水、そして冥界を支配する神。家畜の守り神にして、商人と詩人のパトロン。森の奥、世界樹の根元に潜む、偉大なるトリックスター。
ヴェレスとはどのような神か?
スラヴ神話における主要な神の一柱で、雷神ペルーンと対立する存在です。ペルーンが天空と高みを支配するのに対し、ヴェレスは大地、水、そして地下世界(冥界)を支配します。彼は家畜(富の象徴)の神であり、商業、音楽、魔法の神でもあります。しばしば蛇やドラゴン、あるいは熊の姿で描かれ、世界樹の根元に住んでいます。ペルーンとの戦いは、嵐(雨)をもたらすための神話的サイクルとして解釈されます。
神話でのエピソード
神々の戦い
ヴェレスはペルーンの妻や家畜、家を盗んで挑発します。激怒したペルーンは雷で彼を攻撃し、ヴェレスは木や石、人間、動物に変身して逃げ回ります。ペルーンがヴェレスを打ち負かすと、閉じ込められていた雨(水)が解放され、大地が潤うのです。
死者の王
彼は死者の魂を草原(冥界)へ導く役割も持ちます。人々は誓いを立てる時、ペルーン(武器)とヴェレス(黄金)にかけて誓いました。
信仰と後世への影響
サン・ニコラ
キリスト教化の後、彼の機能は聖ニコラウス(サンタクロースの原型)や聖ブラシウスに引き継がれました。家畜の守護聖人としての性質が残ったのです。
熊崇拝
古くからの熊崇拝と結びついており、森の主としての側面も持ちます。
【考察】その本質と象徴
二元論
善(ペルーン)対 悪(ヴェレス)と単純化されがちですが、本来は「天と地」「乾と湿」という、世界を更生するために不可欠な二つの力の均衡を表しています。
ボヤンへの霊感
『イーゴリ遠征物語』に登場する吟遊詩人ボヤンは、「ヴェレスの孫」と呼ばれます。ヴェレスは言葉と魔法の神でもあり、詩人たちに霊感(インスピレーション)を与えるアポロンのような芸術神としての側面も持っていました。
まとめ
彼は光に追われる影。しかし、影がなければ大地に雨は降らず、草も育たないのです。