シンテトケラス(Synthetoceras)は、中新世後期の北米大陸に生息していた、ラクダやシカに似た奇妙な草食動物です。学名は「統合された角」を意味します。彼らはプロトケラス科という北米固有の絶滅グループに属しており、現生のどの動物とも異なる独自の進化を遂げました。その最大の特徴は、SF映画のクリーチャーのような、常識外れの角のデザインです。
鼻の上のパチンコ
彼らの頭部には、通常の動物と同じような位置に一対の角がありますが、それとは別に、鼻の先端から長く伸びた「Y字型の一本角」が生えていました。まるでスリングショット(パチンコ)のようなこの角は、オスにしかありませんでした。これは明らかに、メスへのアピール(性淘汰)のために進化したディスプレイ器官であり、同時にオス同士の戦いの武器としても使われました。二頭のオスが互いのY字の角をガッチリと組み合わせ、力比べをする姿は、中新世の草原の名物だったことでしょう。
北米のガラパゴス
プロトケラス科は、北米大陸が孤立していた時代に独自の進化を遂げたグループです。シンテトケラスはその最後の生き残りであり、最大種でした。彼らは草原や開けた森林で生活し、硬い草ではなく、柔らかい木の葉や低木を食べていました。足の指は4本あり、走るのにはあまり適していませんでしたが、巨体と角のおかげで捕食者から身を守ることができました。
気候変動の犠牲者
中新世の終わりに気候が寒冷化・乾燥化し、彼らの主食である森林が草原(プレーリー)に変わっていくと、シンテトケラスは環境に適応できずに姿を消しました。彼らと共に、プロトケラス科というユニークな一族も地球上から永遠に失われました。
独自の進化を遂げた角
この不思議なY字の角は、骨が伸びてできたものであり、現代のシカの角(アントラー)のように毎年生え変わるものではありませんでした。一生を通じて伸び続け、年齢とともに立派になっていったと考えられます。この角の形状は、種によって少しずつ異なり、彼らの進化の過程をたどる上で重要な手がかりとなっています。
まとめ
シンテトケラスは、「モテたい」という進化の圧力が、時にどれほど奇抜な形態を生み出すかを示す生きた芸術品です。そのY字の角は、自然界の創造力の豊かさを象徴しています。