カメロケラス(Cameroceras)は、古生代オルドビス紀(約4億7000万年前)の世界中の海に生息していた、巨大な頭足類(イカやタコ、オウムガイの仲間)です。学名は「部屋のある角」を意味し、一般には「巨大なチョッカクガイ(直角貝)」の名前で知られています。その殻の長さは最大で9メートルに達したとも言われ、魚類がまだ小さく弱かった時代に、生態系の頂点に君臨していた絶対王者です。
海を支配した一本角
カメロケラスは、アイスクリームのコーンのような円錐形の殻を持っており、その中に軟体部が入っていました。彼らはジェット噴射で移動することができましたが、巨大な殻が水の抵抗を受けるため、普段は海底付近をゆっくりと漂うように移動していたと考えられます。長い触手を使って、海底を這う三葉虫や、当時の天敵であったウミサソリ(メガログラプタスなど)を捕らえ、インコのような鋭いクチバシで硬い殻をバリバリと噛み砕いて食べていました。
太古のセンサー
彼らの目は、現生のオウムガイと同様にレンズを持たない「ピンホール眼」だったと推測されています。視力はあまり良くありませんでしたが、その代わり嗅覚が非常に発達しており、遠くの獲物の匂いや死肉の気配を敏感に察知することができました。視界の悪い濁った海や深海でも、彼らの狩りに死角はありませんでした。
王者の交代
オルドビス紀の終わりに訪れた氷河期による大量絶滅で、彼らは大きな打撃を受けました。さらに次のシルル紀になると、顎を持った魚類が大型化し、より機敏に泳ぐウミサソリが登場しました。動きが鈍く巨大なカメロケラスは、新しい時代のスピードについていけず、徐々に生態系の主役の座を明け渡し、小型化していく運命を辿りました。
化石に残る巨大さ
世界各地で見つかるカメロケラスの殻の化石は、その太さと長さで見る者を圧倒します。中には大人が中に入れそうなほど太いものもあり、生きていた時の迫力を想像させます。彼らの殻は、死後も海底に残り、他の生物の隠れ家や、時には堆積岩の一部となって、太古の海の記録を保存するカプセルの役割を果たしました。
まとめ
カメロケラスは、海が「殻」を持つ者たちによって支配されていた時代の帝王です。その巨大な化石は、脊椎動物が主役になる前の、知られざる海の歴史を今に伝えています。