アンドリューサルクス(Andrewsarchus)は、約4500万年前(始新世中期)のモンゴルに生息していた、史上最大級の肉食哺乳類です。1923年、ロイ・チャップマン・アンドリュース率いる調査隊によって頭骨が発見されました。その姿は長く謎に包まれていましたが、近年の研究で意外な正体が明らかになりつつあります。
巨大な頭骨と顎
発見された唯一の頭骨は長さ83センチメートルもあり、これはヒグマの倍近い大きさです。顎には骨を噛み砕くための強靭な歯が並んでおり、咬合力は極めて強かったと推測されます。この頭骨の大きさから、全長は4〜5メートル、体重は1トン近くあったと考えられています。
オオカミではなく羊の親戚?
かつては巨大なオオカミやハイエナのような姿(メソニクス類)として復元されていました。しかし、最新の系統解析により、カバやクジラに近い「偶蹄類(または鯨偶蹄類)」の仲間であることが判明しました。つまり、現在描かれる復元図は「毛むくじゃらの巨大なイノシシ」あるいは「エンテロドン(地獄の豚)」に近い姿になっています。蹄(ひづめ)を持つ肉食獣という、極めて珍しい存在です。
スカベンジャーの王
その巨体と強力な顎は、狩りだけでなく、他の捕食者から獲物を奪ったり、大型動物の死骸を処理したりするスカベンジャーとしての役割に適していました。海岸線で打ち上げられた魚やクジラの死骸、浜辺のカメなどを食べていたという説もあります。
まとめ
アンドリューサルクスは、哺乳類の進化史における「怪物」的な存在です。蹄を持つ獣が頂点捕食者になりうることを示した、進化の驚くべき一例です。