ヴォジャノーイ(Vodyanoy) は、ロシアや東欧の川や湖に住む水の精霊です。名前は「水のおじいさん」といった意味を持ちますが、その姿は愛嬌と不気味さが同居しています。緑色の長い髭、カエルのような顔、水かきのある手足、そして膨らんだ太鼓腹。日本の河童にも似ていますが、彼は水中の宮殿に住み、溺死者の魂を壺にコレクションするという陰湿な趣味を持っています。
水車小屋の支配者
粉挽きとの契約
彼は特に水車小屋の下を好んで住処にします。そのため、粉挽き職人たちは水車が壊されないよう、パンやウォッカ、時には黒い鶏などを生贄として捧げました。機嫌が良ければ魚を網に追い込んでくれたり、水車をスムーズに回してくれたりしますが、怒らせると堤防を決壊させ、洪水を起こします。
昼は老人、夜は怪物
昼間は苔むした流木や、巨大な魚(ナマズやカワカマス)に化けて休んでいますが、夜になると本来の姿で水面に現れ、音を立てて跳ね回ったりします。月夜には美しい若者に変身して人間の娘を誘惑することもあると言われます。
現代ファンタジーでの姿
芸術作品とポップカルチャー
ドヴォルザークの交響詩『水の精(Vodnik)』は、このヴォジャノーイの物語を題材にしています。美しくも恐ろしい音楽は、スラヴの人々が抱く水への畏怖を表現しています。
ゲームでの扱い
『ウィッチャー』シリーズなどのダークファンタジー作品では、水辺に潜む危険な怪物や、知性を持った半魚人として登場します。日本の河童と似ていますが、より「人間味のある悪意」や「悲劇性」を帯びて描かれることが多いのが特徴です。水辺のロケーションでは必ずと言っていいほど登場する、代表的なモンスターとなっています。
まとめ
ヴォジャノーイは、水の恵みと恐怖の両面を体現する精霊です。川と共に生きたスラヴの人々にとって、彼は敬うべき水の主であり、決して軽んじてはならない自然の掟そのものでした。