夜更けの竹林から、「バサッ、バサッ」という大きな音が聞こえてくることがあります。風の音ではありません。それは「波山(バサン)」と呼ばれる、真っ赤なトサカを持つ巨大な鶏の妖怪が、羽ばたいている音かもしれません。
名前の由来は羽音
婆娑婆娑(バサバサ)
愛媛県の山奥に伝わるこの妖怪は、別名「婆娑婆娑(バサバサ)」とも呼ばれます。その名の通り、特徴的な羽音を立てることで存在を知らせます。姿はトサカのある大きな鶏のようですが、昼間には決して姿を見せません。竹林の中で風もないのに「ザワザワ」「バサバサ」という音が近づいてきたら、それが波山の合図です。
冷たい火
波山の最大の特徴は、口から赤黒い火を吹くことです。しかし、この火は不思議なことに物を燃やす熱を持っていません。ただ不気味に光るだけの「幻の火」です。この火は狐火の一種とも考えられていますが、鳥が火を吹くという伝承は珍しく、そのビジュアルの強烈さが際立っています。
人前に現れない
臆病な妖怪
人間が音に気づいて近づいていくと、波山の姿はフッと消えてしまいます。人を襲うことはなく、ただ夜の山中で音を立て、光る火を吐いて驚かすだけの、比較的無害な妖怪とされています。
現代キャラクターへの影響
バシャーモの元ネタ?
「火を吹く鶏」というコンセプトから、ポケモンの「バシャーモ」や、その他の火属性の鳥モンスターのモチーフになったと言われることがあります。マイナーな妖怪ですが、そのビジュアルイメージは強力です。
【考察】キジの夜鳴き
ヤマドリの誤認
実在するヤマドリやキジが、夜中に羽ばたく音(ホロ打ち)を聞き間違えたのが正体だと言われています。また、朽ち木のリン光などが「冷たい火」に見えたのかもしれません。
まとめ
波山は、夜の闇が作り出す「音」と「光」の錯覚に、鮮やかな鶏の姿を与えた、想像力豊かな妖怪です。竹林の風情と怪異の恐怖が見事に調和しており、日本の妖怪文化の奥深さを感じさせます。