天地開闢(かいびゃく)の時、高天原に現れた原初の三神の一柱。姿形を持たない神でありながら、死んだ大国主命を生き返らせるなど、強烈な母性と生命力で地上の神々を導く、偉大なる「産霊(むすひ)」の神。
カミムスビとはどのような神か?
『古事記』において、世界が始まった時に最初に現れた「造化三神」の一人です。タカミムスビと同様に性別のない「独神(ひとりがみ)」ですが、神話の中では女神的・母性的な役割を果たすことが多いです。特に大国主神の危機には何度も助け船を出し、彼を保護しました。「ムスビ」とは「生み出す(産む)」「結びつく」という生成の力を意味し、カミムスビはあらゆる生命エネルギーの根源と考えられています。
神話でのエピソード
大国主の蘇生
大国主が兄弟神たちに騙されて殺された時(真っ赤に焼けた岩を受け止めさせられて焼き殺された)、悲しんだ母神の願いを聞き入れ、カミムスビは二人の女神(キサガイヒメとウムギヒメ)を派遣しました。彼女たちの治療(赤貝の粉と蛤の汁を塗る)によって、大国主は見事に生き返りました。
少名毘古那の親
小人の神・スクナビコナは、カミムスビの手の指の間からこぼれ落ちた御子だとされています。カミムスビは「それは私の子供だ」と認め、大国主と兄弟の契りを結んで国作りをするよう命じました。
信仰と文化への影響
縁結びの神?
「ムスビ」の力は、男女の縁や、人と人との繋がりを生み出す力にも通じます。直接的な縁結びの神ではありませんが、すべての「結合」を見守る根源的な神として信仰されています。
出雲との関係
高天原(アマテラス側)のタカミムスビに対し、カミムスビは出雲(大国主側)を擁護・支援する立場として描かれることが多く、出雲神話における最重要の神の一人です。
【考察】その本質と象徴
インビジブル・パワー
姿が見えず、祀られる神社も少ない(主祭神として)。しかし物語の重要な転換点には必ず介入してくる。カミムスビは、目には見えないが世界を動かしている「生命の法則」そのものなのかもしれません。
まとめ
形あるものはいつか滅びます。しかし、それを生み出し、再び結びつけるエネルギーは不滅です。カミムスビは、その「再生」の可能性そのものです。