「吾は悪事も一言、善事も一言、言い離つ神である」。そう名乗り、雄略天皇と対等に狩りを楽しんだという伝説を持つ、葛城山の主一言主神(ヒトコトヌシ)。一言の願いなら必ず叶えるご利益の神として今も人気ですが、歴史の裏では朝廷と対立した豪族の神として、封印されたり貶められたりした複雑な経歴を持つ神です。
天皇と対等だった神
葛城山の狩り
『古事記』では、一言主は雄略天皇の前にそっくりな服装と行列で現れました。天皇が恐れ入って武器や衣服を献上したという記述は、当時この地域を支配していた葛城氏の勢力が、天皇家と拮抗するほど強大だったことを神話的に表していると言われます。
役行者にこき使われた?
転落した神格
時代が下ると、修験道の開祖・役行者(エンノギョウジャ)の伝説において、一言主は「顔が醜いことを恥じて夜しか働かなかったため、役行者に折檻され縛り上げられた」という散々な扱いを受けます。強力な土着の神が、新しい宗教的権威(仏教・修験道)の下位に置かれた象徴的なエピソードです。
まとめ
一言主神は、言葉の重み(言霊)を象徴すると同時に、日本の政治・宗教史の中で翻弄されながらも生き残り続けた、たくましい土着神の代表格です。