ヒルコと共に流されたもう一柱の神、それが淡島神(アワシマノカミ)である。神話の記述はごくわずかだが、この神は後に女性たちの切実な悩みを受け止める、最も優しい救いの神となった。
記紀での扱い
数に入らない子
『古事記』において、ヒルコの次に生まれたが、やはり「子の数に入れない」として流されたのが淡島である。 多くの場合、特定の神名というより「淡島」という島そのものとして扱われるが、民間信仰の中で神格化されていった。
女性の守り神
スクナヒコナとの習合
淡嶋神社(和歌山県)の伝承では、医薬の神・少彦名命(スクナヒコナ)と同一視されることが多い。 特に婦人病(下の病)の治癒、安産、子授けに霊験あらたかとされ、かつては「淡島願人(あわしまがんにん)」と呼ばれる人々が全国を回って信仰を広めた。
人形供養
また、女の子の成長を見守る雛人形を海に流して厄を払う「流し雛」の行事とも結びつき、現在では人形供養の神としても有名である。
【考察】痛みの共有
流された痛みを知る神
親に捨てられ、海を漂ったという悲しい生い立ちが、社会的に弱い立場にあった当時の女性たちの境遇と重なり、「この神様なら私の痛み(病気や悩み)を分かってくれる」という深い共感を生んだのではないだろうか。
まとめ
淡島神は、波間に消えた儚い存在ではなく、多くの女性たちの祈りを受け止め続ける慈愛の器である。