八百万の神々が住む高天原においても、決して支配されることなく、最後まで抵抗し続けた異端の神がいます。それが天津甕星(アマツミカボシ)、またの名を天香香背男(アメノカガセオ)。「星」を神格化したこの神は、そのあまりに強大な力ゆえに、アマテラスの命令に従わない「まつろわぬ神」の筆頭として描かれています。なぜ日本神話では星の神が悪役とされるのか?その謎めいた存在感は、現代のポップカルチャーでも「最強のラスボス」として人気を博しています。光り輝くがゆえに影となる、星の神の真実に迫ります。
タケミカヅチさえ手を焼いた力
国譲りの裏ボス
出雲の国譲りの際、最強の武神タケミカヅチとフツヌシが大活躍しましたが、その彼らでさえ手をこまねいたのが、天で不気味に輝く星の神カガセオでした。『日本書紀』によれば、彼を平定するためにわざわざ織物の神・**建葉槌命(タケハヅチ)**が派遣されました。これを解釈すると、「武力(剣)」ではなく「呪術(織物=星を封じる網)」でしか倒せなかった、あるいは星(自然の猛威)を機織り(文明の秩序)が制したという隠喩だと考えられています。一説には、彼は岩に変えられて封印されたとも言われ、その巨石(宿魂石)が大甕神社に現存しています。
なぜ星は悪なのか?
太陽信仰 vs 星信仰
日本神話はアマテラス(太陽)を中心とする体系です。太陽が出ている昼間、星は見えなくなります。つまり、太陽の支配を邪魔する存在として、星の神は敵対者(悪神)にされやすかったのです。一方で、夜空に燦然と輝く金星(明けの明星)としての威厳ある姿から、茨城県の**大甕神社(おおみかじんじゃ)**などでは、悪神として封印されつつも、強力な地主神として篤く祀られています。完全に消し去ることはできない、宇宙の強大なエネルギーの象徴なのかもしれません。
まとめ
秩序に従わない混沌と自由の象徴、天津甕星。彼が放つ怪しい光は、「正義」や「常識」という枠に収まりきらないアウトローな魅力を、今も私たちに投げかけています。夜空を見上げた時、そこに彼の視線を感じることがあるかもしれません。