黒いローブ、尖った帽子、そして空飛ぶ箒。魔女の三点セットとして欠かせないこのアイテムは、古くから絵本や映画の中で空を飛び回ってきました。『ハリー・ポッター』ではスポーツカーのような高性能マシンとして描かれましたが、そもそもなぜ「掃除用具」で空を飛ぶのでしょうか?その意外とディープな歴史を探ります。
家事と魔女のシンボル
女性の持ち物
中世ヨーロッパにおいて、箒は「家庭を守る女性」の象徴でした。魔女狩りの時代、疑いをかけられた女性たちの身近にあったのが箒であり、「夜な夜な悪魔の宴(サバト)に出かけるために、身近な棒にまたがって飛んでいった」というイメージが定着したと考えられています。
またがって飛び跳ねる儀式
古い農耕儀礼として、女性たちが箒にまたがって畑で高く飛び跳ね、「作物が(このジャンプのように)高く育ちますように」と祈る風習がありました。これが「箒に乗って飛ぶ」伝説のベースになったという説もあります。
あやしい薬の副作用説
飛行軟膏
少し怖い説もあります。中世の魔女たちは、ベラドンナやトリカブトなどの有毒植物を煮込んだ「飛行軟膏」を作っていました。これを皮膚(粘膜)から吸収すると、強烈な幻覚作用により「空を飛んでいるような浮遊感」が得られます。軟膏を塗るのに棒や箒の柄を使った、あるいは柄に塗ってまたがったことで、幻覚の中で空を飛んだ……というのが、現代の薬学的解釈です。
現代の箒事情
ニンバス2000
『ハリー・ポッター』シリーズにおいて、箒は魔法界の自転車やスポーツカーのような扱いになりました。型番があり、スピードや旋回性能が異なり、メンテナンスキットも売られています。「お婆ちゃんの道具」から「少年の憧れのギア」へと、箒のイメージは見事にアップデートされたのです。
まとめ
掃除をして場を清める道具でありながら、空への自由な憧れを乗せる魔法の乗り物。箒は、日常と非日常(魔法)をつなぐ、最も身近な架け橋なのかもしれません。