古代エジプトのが誇る知恵と魔術の神トート。彼が自ら筆を執り、この世のあらゆる真理と強力な魔術を記したとされる伝説の書物が「トートの書」です。そこには、動物の言葉を理解し、神々の姿を見るための呪文が記されていました。しかし、この書は人間が手にするにはあまりに強大すぎる力を秘めており、読んだ者に破滅をもたらす「呪われた禁書」としての物語が語り継がれています。
神の知識が記されたパピルス
二つの呪文
伝説によれば、この書には二つの強力な呪文が記されていました。第一の呪文を唱えれば、天、地、冥界、山、海のすべてを魅了し、鳥や爬虫類、魚の言葉を理解できるようになります。第二の呪文を唱えれば、たとえ死んで墓の中にいても、太陽神ラーの真の姿を見ることができ、月や星々の運行を従わせることができるとされました。
厳重な封印
この危険な書物は、コプトスの海(ナイル川)の底に沈められました。鉄、青銅、イチジク、象牙、黒檀、銀、金で作られた七重の箱に入れられ、周りには蠍や毒蛇、そして決して死なない巨大な蛇が番人として配置されていました。
ネフェルカプタの悲劇
禁断の探索
エジプトの王子ネフェルカプタは、魔術師からこの書の存在を聞き、家族の制止を振り切って探索に向かいました。彼は魔術で川を割り、不死の蛇を倒して書物を手に入れました。彼は書の内容を写し取り、それを溶かしたビールを飲んで知識を体内に取り込みました。
トート神の怒り
自分の知識を盗まれたトート神は激怒し、太陽神ラーに訴えました。神罰により、ネフェルカプタの愛する妻と子供は川に落ちて溺死しました。絶望したネフェルカプタも自ら命を絶ち、トートの書と共に墓に葬られました。その後、別の王子サトニが彼の墓から書を盗み出そうとしますが、ネフェルカプタの亡霊(または幻影の美女)による恐ろしい試練を受け、結局書を墓に戻すことになりました。
【考察】知識への代償
禁断の果実
トートの書の物語は、「神の領域の知識に触れた人間は破滅する」という普遍的なテーマを描いています。旧約聖書の知恵の実や、ファウスト伝説にも通じる、知識欲への戒めです。
タロットの起源説
18世紀以降のオカルト思想において、トートの書はタロットカードの起源であるという説が唱えられました(エテイヤやクロウリーなど)。タロットの22枚の大アルカナは、トートの書に記された古代エジプトの秘儀の絵解きであると主張されましたが、これは学術的には否定されています。しかし、この伝説が現代の魔術的イメージに与えた影響は計り知れません。
まとめ
全知全能への鍵か、破滅への招待状か。トートの書は、知識というものが持つ魅惑的な光と、その裏にある致命的な毒を私たちに突きつけています。